現行の健康保険証の新規発行を停止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行する12月2日まで2日で半年に迫った。マイナ保険証のメリットが実感しにくく、別人データの誤登録問題も尾を引き、4月時点での利用率は6.56%にとどまる。政府は周知活動を強化するなど、利用率向上に躍起だ。
 マイナ保険証の登録者数は約7254万8000人で、全人口の約6割。政府関係者は「国民へのポイント付与事業で登録を呼び掛けたことが一定の成果を上げた」と話す。
 マイナ保険証は医療機関や薬局に設置されたカードリーダーで患者本人かどうかを認証する「オンライン資格確認」を行うのが最大の特徴だ。医療費の不正請求を防げるほか、専用サイト上で過去に処方された薬の服用歴なども閲覧できる。
 しかし、受診回数が少ない若い世代や、パソコン操作などが苦手な高齢者らにはメリットを感じにくいのが現状だ。
 さらにマイナ保険証を巡るトラブルも利用低迷に追い打ちをかけた。昨年5月、健康保険証などが誤って別人のマイナンバーとひも付けられた事案が発覚。国民の不信感を招き、利用率は同年12月まで8カ月連続で減少した。
 厚生労働省は誤登録の再発防止策として、情報の新規登録時などにミスを自動的に確認できるシステムの運用を5月初旬に開始した。5~7月を「集中取組月間」と位置付け、利用人数の増加に応じて医療機関に支援金を支給する事業なども展開。武見敬三厚労相は「利用促進に向けて全力で取り組む」と意気込んでいる。
 マイナ保険証の利用率は今年に入ってから微増傾向に転じ、厚労省幹部は「今後は医療機関の窓口での患者への呼び掛けが普及のカギを握る」と期待する。
 しかし、医療現場からはマイナ保険証への一本化に不安の声が広がる。10万人超の医師・歯科医師が加入する全国保険医団体連合会の担当者は「既にカードリーダーによるマイナ保険証の認証でトラブルが頻発している」と明かす。同意手続きで何度も画面に触れることにストレスを感じる高齢者が多く、「このままでは12月から医療機関の窓口がパンクする」と危惧している。 (C)時事通信社