軽度脳卒中(脳梗塞)に対する血栓溶解療法の有効性や安全性については、これまでさまざまな薬剤を対象に検討がなされてきたが、プロウロキナーゼに関するエビデンスは不明であった。そこで、中国・Capital Medical UniversityのYunyun Xiong氏らは、軽度の虚血性脳卒中を発症後4.5時間以内の患者1,446例を対象に、プロウロキナーゼ静脈内投与による血栓溶解療法の有効性と安全性を多施設前向きランダム化比較試験(RCT)PUMICEで検討。その結果、治療後90日時点の機能的転帰(無障害生存)および安全性プロファイルは標準治療と有意差がなかったとJAMA Neurol(2025年1月21日オンライン版)に発表した(関連記事「血管内治療後tenecteplase動注に頭蓋内出血リスク」、「血管内治療後ウロキナーゼ動注、頭蓋内出血リスクなし」)。
90日無障害生存、全死亡、頭蓋内出血で有意差なし
PUMICEでは中国の89施設において、最終未発症確認時刻から4.5時間以内で、発症前のmodified Rankin Scale(mRS)スコアが0または1、治療開始前の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが5以下の軽度脳梗塞患者1,446例(年齢中央値65.9歳、男性65.5%)を登録。プロウロキナーゼ35mgを静脈内投与(3分間15mgボーラス投与後に30分間20mg点滴投与)するプロウロキナーゼ群と標準治療群に1:1でランダムに割り付けた。なお、ランダム化は非盲検下で、評価項目の検討は盲検下で実施し、標準治療はアスピリンとクロピドグレルの併用が90%を占めた。
解析の結果、主要評価項目とした治療後90日時点におけるmRSスコア0/1(無障害生存)の達成率は、標準治療群の91.0%に対しプロウロキナーゼ群では88.5%で有意差がなかった〔相対リスク(RR)0.97、95%CI 0.94~1.01、P=0.12〕。
安全性の評価では、ランダム化後36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率(標準治療群0% vs. プロウロキナーゼ群0.7%、Fisher exact test P=0.06)、90日全死亡率(同1.4% vs. 2.3%、RR 1.69、95%CI 0.78~3.66、P=0.19)のいずれも両群で有意差がなかった。
プロウロキナーゼ以外の血栓溶解薬も加えたメタ解析結果では「nondisabling strokeに実施すべきでない」
以上の結果から、Xiong氏らは「軽度脳梗塞を発症後4.5時間以内の患者における90日無障害生存に関して、標準治療に対するプロウロキナーゼ静脈内投与の優越性は示されなかったが、両者の安全性プロファイルは同等だった」と結論している。
なお、同氏らは事後解析において、今回のPUMICEに加えて3件の血栓溶解療法に関する第Ⅲ相試験(PRISMS、ARAMIS、TEMPO-2)※のデータを用い、機能障害に至らない(nondisabling)軽度脳梗塞の患者に限定したメタ解析を実施。その結果、mRSスコア0/1達成に関して血栓溶解療法は標準治療に対し劣性で(RR 0.97、95%CI 0.95~0.99)、症候性頭蓋内出血のリスク上昇(同4.83、1.63~14.28)と死亡リスク上昇(同2.78、1.49~5.20)が認められた。同氏らは「この結果は、nondisablingの軽度脳梗塞患者に対しては血栓溶解療法を実施すべきでないという強いエビデンスを提供するものだ」と付言している。
※PRISMS:アルテプラーゼ vs. アスピリン(JAMA 2018; 320: 156-166)、ARAMIS:抗血小板療法(アスピリン+クロピドグレル) vs. アルテプラーゼ(JAMA 2023; 329: 2135-2144)、TEMPO-2:テネクテプラーゼ vs. 標準治療(Lancet 2024; 403: 2597-2605)
(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)