治療・予防

慌てず正しく対処を―鼻血
家庭でできる圧迫止血 国際医療福祉大学成田病院救急科 志賀隆部長

 鼻血が出た時は、慌てて病院に行く前に、その場で適切に止血処置を行うことが大切だ。鼻血の原因と正しい対処法、受診が必要な場合の見極め方などについて国際医療福祉大学成田病院(千葉県成田市)救急科の志賀隆部長に聞いた。

家庭で行う鼻血の止血方法

家庭で行う鼻血の止血方法

 ▽高血圧や薬の影響も

 鼻血の多くは、鼻の入り口付近にあるキーゼルバッハ部位からの出血だ。血管が集中し、粘膜も極めて薄いため、鼻の穴に指を入れたとき毛細血管のわずかな引っかき傷でも出血しやすい。

 また、高齢者や高血圧の持病がある人は、毛細血管がもろくなって特に出血しやすく、「血液を固まりにくくする抗凝固薬(ワーファリンなど)、抗血小板薬(アスピリンなど)が原因になることもあります」と志賀部長。空気の乾燥や鼻炎などでも鼻の粘膜が弱くなるため出血しやすくなる。

 鼻血が出た時、首を後方に倒し、顔を天井に向けると出血が止まらないばかりか、喉から食道、胃へと鼻血が流れ込み、気持ち悪くなったり、嘔吐(おうと)したりすることがある。「鼻血が止まらず、吐血までするとパニックを起こす例もあります。鼻から喉に血が流れてきたら飲み込まずに口から出してください」と志賀部長。

 ▽10分間以上圧迫を

 自宅でできる止血方法は、座った状態で前かがみになり、小鼻(鼻の柔らかい部分)にガーゼを被せて親指と人さし指で強くつまみ、10分間以上圧迫すること。鼻の穴をふさぐことで血液がたまって固まりやすくなる。ただし、圧迫している途中で「もう止まったかな?」と手を放し、圧迫を中断してしまうと血液が固まりきらずに出血が止まらないことがある。

 「落ち着いて10分間以上、圧迫を3セット行いましょう。たいていは止血できます。それでも止まらない場合は、医療機関に電話で相談するか、救急車を呼んでもよいでしょう」と話す。

 また、止血後にふらつき(貧血)や血圧低下などが見られた場合は、耳鼻科の受診が勧められる。救急外来では、薬を塗ったガーゼを鼻の穴に詰めたり、出血部位に小さなバルーンを挿入し膨らませて血管を圧迫したりする方法が一般的だという。

 志賀部長は「特に高齢者は止血までに数時間要することがあるため、不安やいらだちが強くなりがちです。ただ患者自身が適切な対応をすることで止血できますので、焦らず、じっくりと処置を続けることが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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