発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は造血幹細胞に障害が生じる希少疾患で、血管内溶血や血栓症などを引き起こす終末補体の過剰活性が問題となる。治療の第一選択はヒト化抗補体(C5)モノクローナル抗体(C5阻害薬)エクリズマブまたはラブリズマブの点滴静注である。昨年(2024年)2月、PNHを適応として承認されたpH依存的結合性抗C5モノクローナル抗体クロバリマブは、C5阻害薬ナイーブ例または他のC5阻害薬からの切り替え例に対する安全性が認められ、有効性に関してはエクリズマブに対する非劣性が示されている。スイス・ロシュ社のValérie Cosson氏らは、クロバリマブの第Ⅲ相ピボタル試験COMMODORE 2、支持試験COMMODORE 1および3、第Ⅰ/Ⅱ相国際多施設共同非盲検試験COMPOSERのサブ解析を実施。組み入れ患者の97%以上および同薬の血中濃度が100μg/mL以上の患者で終末補体活性の完全阻害を達成したとの結果をBr J Clin Pharmacol(2025年1月21日オンライン版)に報告した(関連記事「夜間ヘモグロビン尿症新薬の安全性、標準薬と同等」)。
薬物動態および薬力学、有効性などを評価
各試験の対象はCOMMODORE 2、3はC5阻害薬ナイーブ例(以下、ナイーブ例)、COMMODORE 1はエクリズマブからの切り替え例、COMPOSERは健常人、ナイーブ例、他剤からの切り替え例だった。COMMODORE 3試験における治療期間の中央値はナイーブ例で52.1週、切り替え例で32.3週だった。
薬物動態については血中クロバリマブ濃度、薬力学的バイオマーカーとして終末補体活性〔血清補体価(CH50)濃度、血中遊離C5濃度〕を測定し、有効性については正規化乳酸脱水素酵素(LDH)値を溶血のマーカーとして評価した。
体重ごとに2段階の用量設定が必要
解析対象は健常人が9例、ナイーブ例が210例、切り替え例が211例、年齢は13~85歳、体重は40.6~140kgだった。薬物動態データから、血中クロバリマブ濃度は初回の静脈内投与後から100μg/mLを上回り、観察期間を通じ93.6%(353例)が100μg/mL以上を維持していた。ナイーブ例と切り替え例の間に差はなかった。定常状態では、血中クロバリマブ濃度は240μg/mL前後で安定していた。
また、体重が薬物のクリアランスおよび分布容積に影響を及ぼすことが薬物動態データから示された。体重75kgの基準例と比べ、112kg例(体重分布の97.5パーセンタイル)のクリアランスは35.1%、分布容積は31.6%高かった。一方、47kg例(同2.5パーセンタイル)ではそれぞれ29.6%、27.4%低かった。このことから、体重ごとに2段階の用量設定が必要であることが示唆された。年齢と血中クロバリマブ濃度との関連はなかった。
重篤な有害事象との関連は見られず
薬力学的な検証では、CH50濃度30U/mL未満または血中遊離C5濃度0.0001g/L未満を終末補体活性の完全な阻害と定義した。COMMODORE 3試験において、クロバリマブ投与後のCH50濃度中央値はナイーブ例で10U/mL未満と低く、切り替え例でも評価期間を通じて同様の値が維持された。ベースラインの血中遊離C5濃度中央値は約0.2g/Lで、ナイーブ例/切り替え例ともに治療開始後は0.0001g/Lに低下し、観察期間を通じて維持された。
COMMODORE 3試験では、97%(377例中366例)で観察期間を通じて完全な終末補体活性阻害が持続されていた。
クロバリマブ濃度と補体活性の関係を評価するために、薬物動態学的/薬力学的解析を行った。その結果、CH50および血中遊離C5に対するクロバリマブの濃度依存的な阻害が観察された。推奨されたレジメンで投与した場合、血中クロバリマブ濃度100μg/mL以上が終末補体活性の完全阻害に関連していた。血中クロバリマブ濃度が50~100μg/mLの例でも大半が終末補体活性の完全阻害を達成した。
安全性についてロジスティック回帰分析を実施したところ、薬物動態のパラメータ〔最高血中濃度(Cmax)および曲線下面積(AUC)〕とグレード3以上の有害事象、特記すべき有害事象、クロバリマブに関連する重篤な有害事象との有意な関連はなかった。感染症との有意な関連が示されたが、クロバリマブの曝露量増加に伴い感染症は減少した。
この解析では、薬物動態および薬力価を評価した。薬物動態解析の結果、クロバリマブの薬物動態パラメータは直線的で、用量依存的な曝露量の増加が認められた。同薬皮下投与後のバイオアベイラビリティは83%で、推定半減期は53日だった(エクリズマブは11日、ラブリズマブは50日)。
以上の結果から、Cosson氏らは「臨床試験を通じて収集した薬物動態学的および薬力学的データは、C5阻害薬ナイーブのPNH例または他のC5阻害薬からクロバリマブへの切り替え例に対する有効性と安全性を支持している」と結論している。
(編集部・栗原裕美)