GLP-1受容体作動薬によりアルコール摂取が減少する可能性が、前臨床研究、観察研究、薬剤疫学研究によって示唆されている。米・University of Southern CaliforniaのChristian S. Hendershot氏らは、そうした知見の臨床的意義を明らかにするために、アルコール使用障害(AUD)を有する成人において、週1回のセマグルチド皮下投与がアルコール摂取および渇望に与える影響を第Ⅱ相二重盲検ランダム化比較試験により評価。低用量セマグルチドが治療後の実験室環境下におけるアルコール摂取量を有意に減少させたことをJAMA Psychiatry2025年2月12日オンライン版)に報告した(関連記事「乾癬治療薬がアルコール依存に有効?」)。

実験室でのアルコール摂取量と週単位の変化を評価

 米国の学術医療機関の外来において2022年9月~24年2月にAUD治療を希望していない患者48例〔女性71%、平均年齢(標準偏差)39.9(±10.6)歳〕を登録し、セマグルチド群(0.25mg/週を4週間、0.5mg/週を4週間、1.0mg/週を1週間投与)とプラセボ群に1:1の比率でランダム化して治療し、intention-to-treat解析を行った。

 主要評価項目として、治療前と治療後(8週目の0.5mg/週投与期間終了後)に実験室においてアルコールの自発的な摂取量を測定。また、副次評価項目および探索的評価項目として、試験中の外来診療時に1週間単位でアルコール摂取量と渇望の変化を評価した。

 実験室の評価では、参加者の好みのアルコール飲料を用意し、50分間飲酒を自制できた場合には金銭報酬を与えた。その後の120分間に自分のペースで堪能するまで飲酒するよう指示した。

飲酒日当たりのアルコール摂取量、週ごとのアルコールへの渇望が減少

 9週間の治療を完遂したのは42例だった。ITT解析群48例において、低用量セマグルチドは、実験室評価におけるアルコール摂取量と最高呼気アルコール濃度を、中等~大規模の効果量をもって減少させた(アルコール摂取量:β=−0.48、95%CI −0.85~−0.11、P=0.01、最高呼気アルコール濃度:同−0.46、−0.87~−0.06、P=0.03)。

 セマグルチド治療は、1日当たりの平均飲酒量や飲酒日数には影響を与えなかったが、飲酒日当たりのアルコール摂取量(β=−0.41、95%CI −0.73~−0.09、P=0.04)および週ごとのアルコール渇望(同0.39、−0.73~−0.06、P=0.01)を有意に減少させた。また、セマグルチド治療は、長期的な大量飲酒の減少も予測した(同0.84、0.71~0.99、P=0.04)。

喫煙者では喫煙本数も減少

 喫煙者のサブグループにおいて、セマグルチド治療は、1日当たりの喫煙本数の相対的減少も予測した(β=−0.10、95%CI −0.16~−0.03、P=0.005)。

 1951年に米食品医薬品局(FDA)が最初のAUD治療薬であるジスルフィラムを承認して以来、新たにFDAの承認を受けたAUD治療薬は、naltrexoneとアカンプロサートの2種類のみである。この承認頻度は、糖尿病治療薬の承認ペースと比べ極めて低い。そうした背景を踏まえ、Hendershot氏らは「今後、追加の第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験によってGLP-1受容体作動薬のAUDへの適応拡大が支持されれば、これらの治療薬は広く臨床に浸透する可能性がある」と指摘。今回の結果を追認するために「大規模臨床試験によりGLP-1受容体作動薬とその他のインクレチン関連療法のAUDに対する有効性を評価する必要がある」と結論している。

医学ライター・小路浩史