日本高血圧学会は3月1日、2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災の延焼が続いている事態を受け、公式サイトに「寒冷被災地域の冬季災害高血圧管理」を掲出。災害高血圧の特徴と循環器リスクの低減に向け、寒冷被災地における血圧管理と高血圧合併症予防の要点をまとめている。(関連記事「被災地では断水の長期化が脂質代謝に影響」「医療崩壊防げるか、能登地震で露呈した課題」「被災地vs.大都市圏―震災への備えは万全か?」「冬の被災地医療、漢方薬が有用かつ有効」)

災害後の循環器疾患の抑制には血圧管理が重要

 災害被災周辺地域では災害高血圧が発生し、脳卒中、心筋梗塞、心不全、大動脈解離などの循環器疾患が増加する。こうした災害後の循環器疾患の発症抑制には、血圧管理が極めて重要となる。しかし、今回の山林火災の被災地域は寒冷地域であり、時期も冬季であることから、血圧管理が難しく、循環器疾患のさらなる増加が危惧される。

 国内では、災害時の血圧管理に関する十分な科学的エビデンスは存在しない。そこで日本高血圧学会は、阪神・淡路大震災や東日本大震災、能登半島地震などの被災地における継続した医療を通じて得た経験と客観的なデータから成る後ろ向きエビデンスに基づき、災害高血圧の特徴と循環器リスクの低減に向けた「冬季被災地の循環器疾患予防10項目」をチェックリスト形式で作成()。

図. 冬季被災地の循環器疾患予防10項目

(日本高血圧学会公式サイト)

 さらに、災害時こそ睡眠と減塩が重要であるとして、同学会理事長の苅尾七臣氏が監修した被災者自身が行える高血圧管理や減塩アドバイスに関する情報も掲載。被災地では寒さが続き、薬剤が十分に行き届かない、避難所や住環境が十分に整備されていない状況にあることが想定されるが、「寒冷被災地域の冬季災害高血圧管理」を1つの目安として役立ててほしいとしている。

 また、同学会、日本循環器学会、日本心臓病学会は「『避難所における循環器疾患の予防』に関するお知らせ(3学会合同声明)」を日本循環器学会の公式サイトに掲出。2014年に刊行した『災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン』の「ダイジェスト版」と「オリジナル版」を公開している。

編集部・関根雄人