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ストレスによる持続的な不安のメカニズムを解明!

NSGグループ
PTSDモデル動物の脳形態変化




【概要】
心身に大きな傷となるような経験は、持続的で制御できない恐怖や不安を引き起こします。
東北大学加齢医学研究所の領家梨恵非常勤講師【新潟医療福祉大学助教(NSGグループ)】の研究グループは、複数のストレスと長期的な不安行動の観察及び脳画像撮像を組み合わせることで、持続的な不安が大人の雄ラットの脳に与える影響を検証しました。

東北大学加齢医学研究所の領家梨恵非常勤講師(新潟医療福祉大学助教)の研究グループは、複数のストレスと長期的な不安行動の観察及び脳画像撮像を組み合わせることで、持続的な不安が大人の雄ラットの脳に与える影響を検証しました。複数ストレスを受けたラットは、ストレスを受けないラットと比べて、以前にストレスを受けた場所で長い時間動けなくなる(フリーズする)状態が続きました。脳形態解析により、不安反応(フリーズ)が大きいほど、扁桃体-海馬領域の体積が減少していたことが明らかにしました。
厳しいストレスに曝された後の持続的で消えない不安と扁桃体-海馬領域の個体差の関連を示唆する成果です。
本成果は、2024年6月13日付でBiological Psychiatry: Global Open Scienceにオンライン掲載されました。

【発表のポイント】
●心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder: PTSD)は難治性の精神疾患で、動物モデルによる神経生物学的機序の理解がPTSD治療に有用であることがわかりました。
● 複数のストレスを受けたラットにおける不安行動と脳形態を長期的に計測しました。
●多重ストレスが長期的に続く不安を引き起こす脳内メカニズムを、不安行動と脳形態の変化から明らかにした成果です。

【詳細な説明】
研究の背景
様々なトラウマ体験を既にしているPTSD患者における研究と比べて、PTSDモデルのげっ歯類による研究は統制されたトラウマ体験の前と後の比較検討ができるという利点があります。それらの先行研究から、複数回のストレス暴露がヒトのPTSD症状と合致した行動を引き起こすことが分かっています。また、トラウマ記憶や不安は長期的に続くものなので、PTSD的な行動を長期的に複数回検討する必要があります。今回の取り組み
本研究は、複数のストレス暴露と長期的・複数回の行動観察に加えて、ストレス暴露前と暴露後の脳の変化を磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging: MRI)を用いて検証し(図1)、長く続く不安行動に対応する脳の形態的変化を明らかにしました。
 ストレスを受けた約1ヵ月後であっても、複合ストレス(Multiple Stress: MS)群のラットは、ストレスを受けない統制群(Control)よりも不安行動(ストレスを経験した場所で動けなくなってしまう時間)が多く、その多さは扁桃体-海馬領域の容量低下と関係していました(図2)。今後の展開
ストレスによる消えない不安の原因となりえる脳内基盤が特定され、それらの脳領域、神経回路をターゲットとした治療がPTSDに有効である可能性が示唆されました。


図1. 実験手順



図2. 不安行動の多さと関係する脳容量の減少

【謝辞】
本研究は科学研究費補助金若手研究「長期的ストレス障害を示す神経基盤解明:免疫内分泌に注目して」の支援のもとで行われました。【論文情報】
タイトル:Multiple stress induces amygdalohippocampal volume reduction in adult male rats as detected by longitudinal structural magnetic resonance imaging
著者:Rie Ryoke*, Teruo Hashimoto, Ryuta Kawashima
*責任著者:東北大学加齢医学研究所応用脳科学研究分野 非常勤講師、新潟医療福祉大学
心理健康学科 助教
領家梨恵
掲載誌:Biological Psychiatry: Global Open Science
DOI10.1016/j.bpsgos.2024.100334
URL: https://www.bpsgos.org/article/S2667-1743(24)00047-8/fulltext
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