日本老人福祉財団、介護DXによる夜間見守りで、職員の身体的・精神的負担軽減に大きく寄与
一般財団法人日本老人福祉財団
夜間の訪室回数の削減、状況把握により、入居者の睡眠の質・量向上などケアの面でも改善
介護付有料老人ホーム〈ゆうゆうの里〉を全国7箇所で運営する一般財団法人日本老人福祉財団(本部:東京都中央区、理事長:小口明彦)ではこのたび、2023年度より佐倉〈ゆうゆうの里〉で導入・活用してきた「見守りライフ」の効果検証を取りまとめ、職員の身体的・精神的負担軽減に大きく寄与していることを改めて確認しました。
介護業界においては、様々な理由から人材不足が指摘されています。今年7月、厚生労働省が発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によれば、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。2022年度の介護職員数約215万人と比較すると、2026年時点で約25万人、2040年には約57万人の職員不足となる計算です。
そして、今年8月に発表された「2022年度介護保険事業状況報告」によれば、要支援・要介護認定者は694万人と過去最高を更新しており、人材不足の状況は今後さらに深刻さを増していくと考えられます。
この課題解決に向けて、厚生労働省では(1)介護職員の処遇改善(2)多様な人材の確保(3)離職防止(4)魅力向上(5)外国人材の受け入れ環境整備という5つの施策を掲げていますが、財団では介護DXの導入が処遇改善をはじめとしたこれらの施策にも合致するものと考え、積極的な取り組みを進めています。
そのひとつが「見守りライフ」です。「見守りライフ」は、離床センサーやカメラなどを活用した高齢者見守りシステムで、24時間365日入居者の状況を見える化します。具体的には、すでにあるベッドに荷重センサーやバイタルセンサー、カメラを取り付けることで、入居者の動きを検知するだけでなく、睡眠状況といった生活リズムや体重、脈拍・呼吸数なども把握することができます。佐倉〈ゆうゆうの里〉では2023年夏、この「見守りライフ」を全111床で導入しました。
その結果、訪室によって行っていた夜間の安否確認をほぼすべて「見守りライフ」による確認に置き換えることができ、これまで一晩当たり約50回行っていた職員による安否確認のみの訪室を削減することができました。また、一晩3回の訪室による安否確認が不要となった9名の入居者について、その睡眠時間・睡眠の質を調べたところ、一日当たりの夜間(18:00~7:00)の睡眠時間は7時間56分から8時間23分へ(27分、6%増) 、深い睡眠も1時間22分から1時間44分へ(21分、26%増) といずれも増加していました。これは、安否確認のための訪室を削減したことで、これまでドアの開け閉めなどによって睡眠を妨げてしまっていた状況が改善された結果と考えられます。
このほかにも、「見守りライフ」活用前後4か月のケアセンター居室での転倒事故件数を比較したところ、平均してひと月あたり19.5件あった転倒事故が導入後は10件と46%に半減しています。引き続きの検証は必要ながらも、この点でも「見守りライフ」の導入・活用が入居者の安全に寄与していると考えられます。
さらに、「見守りライフ」の導入・活用は、入居者へのケア、QOL(生活の質)の向上だけではなく、施設で働く職員の肉体的な負担、「安全な介護ができていないのでは」という精神的負担の軽減にも効果を発揮しています。
一晩あたり約50回の訪室削減は、時間にすると一晩あたり約25分、1か月にすると約750分の作業時間の削減に相当します。また、訪室のための移動についても、一夜勤あたり約4,000歩の減少につながっており、1,000歩=10分で換算すると一夜勤で約40分、1か月にすると約1,200分の移動時間削減を実現していることになります。
今回の効果検証に伴い、職員を対象に行ったアンケート結果でも、「あなたは夜勤中の業務について負担感を感じますか?」という問いに対し、「とても感じる」という答えは27%から13%に減少しているほか、「夜間もコールやセンサーに追われることで感じる負担」について尋ねた設問でも、精神的な負担が67%から42%へ、身体的な負担が73%から32%へといずれも減少しており、職員の精神的・肉体的負担の軽減に寄与していたことが分かります。
日本老人福祉財団 本部 施設支援部 サービス推進課 次長 高橋渉は、今回の効果検証を踏まえて、「見守りライフ」導入の成果について次のよう語っています。
「データでも証明されていますが、多くの職員が『深夜に落ち着かない入居者が少なくなった』と直感的に効果を感じています。また、導入準備から効果検証に至るプロセスでは、サービス向上について改めて考える良いきっかけとなり、職員間の連携など他の課題に対しても効果が波及しています」
すでに佐倉〈ゆうゆうの里〉では今回の効果検証を踏まえて、深夜帯の勤務人員を1名削減して日中のシフトを増員したほか、入手したデータをケアプランに活用するといった取り組みを始めています。例えば、コールやセンサーの発報が多く、データからも安眠できていないことが見てとれる入居者に対して、運動に参加するなど日中の活動量を増やす、就寝時間をずらすといった対策をとった結果、夜間の覚醒時間や離床回数が減るといった効果が出始めています。導入から約1年が経過し、職員が「見守りライフ」の利用そのものや、そこから得られるデータの活用に馴染んできたこともあり、今後はさらに現場・本部での検証を進めつつ、佐倉以外の施設での導入も検討しています。
日本老人福祉財団では引き続き、効果的な介護DXの導入・活用を推進していくことで、重度化防止・自立支援に向けたより良いケアを提供し、入居者のQOLを向上させていくとともに、職員の負担を軽減し、効率的で働きやすい施設運営を目指していきます。
■日本老人福祉財団のなりたち
日本老人福祉財団は、1970 年代初頭の高度経済成長期のなかでいち早く将来の「日本社会の高齢化」を見据えて、特に日本経済の高度成長による労働人口の都市への集中がもたらす「核家族化」現象により、一人暮らしの老人の増加などの高齢期における経済上、生活上、肉体的・精神的健康の問題に立ち向かうべく、1973 年に設立いたしました。
■日本老人福祉財団の基本理念
―豊かな福祉社会の実現を目指して―
私達は、老後の“安心”と“幸せ”を提供することにより社会へ貢献します。
私達は、はたらく人達の“人間性”を大切にします。
『ケア・スピリット』
私にとって、あなたはとても大切な人です。
■組織概要
財団名:一般財団法人 日本老人福祉財団
理事長:小口 明彦
設立:1973(昭和48)年
事業:介護付有料老人ホーム〈ゆうゆうの里〉を全国7箇所で運営
(佐倉、湯河原、伊豆高原、浜松、京都、大阪、神戸)
特徴:創立50年を迎えた老舗の有料老人ホーム運営事業者。
自立の時期に入居し最期まで暮らせる住まい(終の棲家)を提供
1施設あたり平均300戸を超える大型施設のCCRC「高齢者コミュニティ」を展開している
HP:https://jscwo.jp/
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夜間の訪室回数の削減、状況把握により、入居者の睡眠の質・量向上などケアの面でも改善
介護付有料老人ホーム〈ゆうゆうの里〉を全国7箇所で運営する一般財団法人日本老人福祉財団(本部:東京都中央区、理事長:小口明彦)ではこのたび、2023年度より佐倉〈ゆうゆうの里〉で導入・活用してきた「見守りライフ」の効果検証を取りまとめ、職員の身体的・精神的負担軽減に大きく寄与していることを改めて確認しました。
介護業界においては、様々な理由から人材不足が指摘されています。今年7月、厚生労働省が発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によれば、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。2022年度の介護職員数約215万人と比較すると、2026年時点で約25万人、2040年には約57万人の職員不足となる計算です。
そして、今年8月に発表された「2022年度介護保険事業状況報告」によれば、要支援・要介護認定者は694万人と過去最高を更新しており、人材不足の状況は今後さらに深刻さを増していくと考えられます。
この課題解決に向けて、厚生労働省では(1)介護職員の処遇改善(2)多様な人材の確保(3)離職防止(4)魅力向上(5)外国人材の受け入れ環境整備という5つの施策を掲げていますが、財団では介護DXの導入が処遇改善をはじめとしたこれらの施策にも合致するものと考え、積極的な取り組みを進めています。
そのひとつが「見守りライフ」です。「見守りライフ」は、離床センサーやカメラなどを活用した高齢者見守りシステムで、24時間365日入居者の状況を見える化します。具体的には、すでにあるベッドに荷重センサーやバイタルセンサー、カメラを取り付けることで、入居者の動きを検知するだけでなく、睡眠状況といった生活リズムや体重、脈拍・呼吸数なども把握することができます。佐倉〈ゆうゆうの里〉では2023年夏、この「見守りライフ」を全111床で導入しました。
その結果、訪室によって行っていた夜間の安否確認をほぼすべて「見守りライフ」による確認に置き換えることができ、これまで一晩当たり約50回行っていた職員による安否確認のみの訪室を削減することができました。また、一晩3回の訪室による安否確認が不要となった9名の入居者について、その睡眠時間・睡眠の質を調べたところ、一日当たりの夜間(18:00~7:00)の睡眠時間は7時間56分から8時間23分へ(27分、6%増) 、深い睡眠も1時間22分から1時間44分へ(21分、26%増) といずれも増加していました。これは、安否確認のための訪室を削減したことで、これまでドアの開け閉めなどによって睡眠を妨げてしまっていた状況が改善された結果と考えられます。
このほかにも、「見守りライフ」活用前後4か月のケアセンター居室での転倒事故件数を比較したところ、平均してひと月あたり19.5件あった転倒事故が導入後は10件と46%に半減しています。引き続きの検証は必要ながらも、この点でも「見守りライフ」の導入・活用が入居者の安全に寄与していると考えられます。
さらに、「見守りライフ」の導入・活用は、入居者へのケア、QOL(生活の質)の向上だけではなく、施設で働く職員の肉体的な負担、「安全な介護ができていないのでは」という精神的負担の軽減にも効果を発揮しています。
一晩あたり約50回の訪室削減は、時間にすると一晩あたり約25分、1か月にすると約750分の作業時間の削減に相当します。また、訪室のための移動についても、一夜勤あたり約4,000歩の減少につながっており、1,000歩=10分で換算すると一夜勤で約40分、1か月にすると約1,200分の移動時間削減を実現していることになります。
今回の効果検証に伴い、職員を対象に行ったアンケート結果でも、「あなたは夜勤中の業務について負担感を感じますか?」という問いに対し、「とても感じる」という答えは27%から13%に減少しているほか、「夜間もコールやセンサーに追われることで感じる負担」について尋ねた設問でも、精神的な負担が67%から42%へ、身体的な負担が73%から32%へといずれも減少しており、職員の精神的・肉体的負担の軽減に寄与していたことが分かります。
日本老人福祉財団 本部 施設支援部 サービス推進課 次長 高橋渉は、今回の効果検証を踏まえて、「見守りライフ」導入の成果について次のよう語っています。
「データでも証明されていますが、多くの職員が『深夜に落ち着かない入居者が少なくなった』と直感的に効果を感じています。また、導入準備から効果検証に至るプロセスでは、サービス向上について改めて考える良いきっかけとなり、職員間の連携など他の課題に対しても効果が波及しています」
すでに佐倉〈ゆうゆうの里〉では今回の効果検証を踏まえて、深夜帯の勤務人員を1名削減して日中のシフトを増員したほか、入手したデータをケアプランに活用するといった取り組みを始めています。例えば、コールやセンサーの発報が多く、データからも安眠できていないことが見てとれる入居者に対して、運動に参加するなど日中の活動量を増やす、就寝時間をずらすといった対策をとった結果、夜間の覚醒時間や離床回数が減るといった効果が出始めています。導入から約1年が経過し、職員が「見守りライフ」の利用そのものや、そこから得られるデータの活用に馴染んできたこともあり、今後はさらに現場・本部での検証を進めつつ、佐倉以外の施設での導入も検討しています。
日本老人福祉財団では引き続き、効果的な介護DXの導入・活用を推進していくことで、重度化防止・自立支援に向けたより良いケアを提供し、入居者のQOLを向上させていくとともに、職員の負担を軽減し、効率的で働きやすい施設運営を目指していきます。
■日本老人福祉財団のなりたち
日本老人福祉財団は、1970 年代初頭の高度経済成長期のなかでいち早く将来の「日本社会の高齢化」を見据えて、特に日本経済の高度成長による労働人口の都市への集中がもたらす「核家族化」現象により、一人暮らしの老人の増加などの高齢期における経済上、生活上、肉体的・精神的健康の問題に立ち向かうべく、1973 年に設立いたしました。
■日本老人福祉財団の基本理念
―豊かな福祉社会の実現を目指して―
私達は、老後の“安心”と“幸せ”を提供することにより社会へ貢献します。
私達は、はたらく人達の“人間性”を大切にします。
『ケア・スピリット』
私にとって、あなたはとても大切な人です。
■組織概要
財団名:一般財団法人 日本老人福祉財団
理事長:小口 明彦
設立:1973(昭和48)年
事業:介護付有料老人ホーム〈ゆうゆうの里〉を全国7箇所で運営
(佐倉、湯河原、伊豆高原、浜松、京都、大阪、神戸)
特徴:創立50年を迎えた老舗の有料老人ホーム運営事業者。
自立の時期に入居し最期まで暮らせる住まい(終の棲家)を提供
1施設あたり平均300戸を超える大型施設のCCRC「高齢者コミュニティ」を展開している
HP:https://jscwo.jp/
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(2024/09/18 11:00)
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