ナノバブルによる歯科インプラントの画期的技術を開発
日本ビテイリース株式会社
歯科インプラントの有機物除去と骨形成を促進する技術。高齢化社会での充実した食生活の実現に向けて、医療現場と患者への負担低減を目指す。
歯科用インプラント材の濡れ性試験
ナノスイカンパニーは、中澤歯科・東北大学未来科学技術共同研究センターの高橋正好特任教授らとの共同で、オゾンナノバブル水を用いた歯科用インプラント材の超親水性化技術を確立しました。この技術により、有機物で汚染され疎水化したインプラント材を、オゾンナノバブル水に10分間浸漬するだけで表面物性を大幅に改善できます。本研究成果は2024年11月25日、米国化学会の専門学術誌Langmuirにオンライン掲載されました。
【研究成果のポイント】
・10分間の処理で表面特性を改善
オゾンナノバブル水にチタン製歯科用ンプラント材を浸漬するだけで、有機物の除去と超親水性化が実現しました。
・長期間の親水性維持
表面に付着したナノバブルにより、親水性が長期間持続することが確認されました。
・幅広い応用可能性
本技術は形状を問わず適用可能であり、人工関節や心臓血管デバイスなど、他の生体材料への応用も期待されています。
【研究の背景】
酸化チタン(※1)は、強靭で化学的安定性と生体適合性に優れ、各種インプラント材として医療現場で広く利用されています。歯科用インプラント治療は、失った歯の機能を回復し、自然な咀嚼を可能にする重要な医療技術であり、スクリュー状に成型された酸化チタンを顎骨に埋入し、人工歯を固定します。このインプラント材には高い生体適合性が求められ、体内に挿入されると血液や体液と接触し骨芽細胞(※2)の付着や増殖を促進することで骨形成を助けます。この過程で、インプラント材表面が親水性であることは迅速な骨結合(オッセオインテグレーション)を促進し、その後の機能回復において重要な要素となります。しかし、手術中や準備段階での有機汚染による表面の疎水化は課題のひとつであり、現場で即応可能な対策が求められています。
一方、ナノバブルは水中に存在する極めて微小な気泡で、優れた持続性を持つ点が特徴です。図1は、原子間力顕微鏡(※3)を用いて、水溶液中に浮遊するナノバブルを観察した画像です。これらのナノバブルは直径10~20nmの球形粒子で、その表面には数ナノメートルの凹凸構造が確認されました。この物性から、ナノバブルは殻を持つ中空の粒子である可能性が高く、「ナノセル」とも呼ばれます。また、ナノバブル内部の気体を変えることで異なる機能を持たせることが可能であり、特にオゾンを包含させて作成したオゾンナノバブルはその強い酸化力が注目されています。
図1 原子間力顕微鏡を利用したナノバブルの観察
【具体的な効果】
この技術では、有機物で汚染され疎水化したインプラント材を、オゾンナノバブル水に10分間浸漬するだけで表面物性を大幅に改善できます。
図2は、処理前後の酸化チタン素材の濡れ性試験結果を示しています。処理前(左図)は疎水性(表面で水滴が広がらない)を示しましたが、オゾンナノバブル水で処理後は超親水性となり、7日間大気中に放置した場合でも(右図)優れた親水性を維持していることが確認されました。
また、実際に利用されているスクリュー型インプラント材を用いて濡れ性試験を実施しました(図3)。処理前(左図)は疎水性を示し、水が下端部で留まりましたが、処理後(右図)では親水性に変化し、水がスクリュー表面を伝って上昇する現象が観察されました。
図4に示すように、インプラント材が親水化する主なメカニズムは、
1.オゾンナノバブル水の強い酸化力による有機物の分解・除去
2.ナノバブル(ナノセル)の表面への付着
によるものです。有機物が除去されることで親水性が回復し、その後ナノバブルが表面に付着することで親水性が長期間維持されると考えられます。
図2 酸化チタン素材の濡れ性試験
図3 歯科用インプラント材の濡れ性試験
図4 オゾンナノバブルによるインプラント材の親水化メカニズム(イメージ)
【今後の展開】
インプラント材をナノバブル水に浸すだけで表面の物性が改善されるため、医療現場での負担軽減が期待されます。さらに、この技術は形状を問わないため、人工関節や心臓血管デバイスなど整形外科を含む幅広い医療分野への応用が見込まれます。また、ナノバブル水には人体の酵素活性を高める効果が確認されており、高齢化社会における健康維持や医療負担の軽減への貢献も期待されています。今後もさらなる応用の可能性を追求し、研究を進めてまいります。
【論文情報】
タイトル: Impact of Bulk Nanobubble Water on a TiO2 Solid Surface: A Case Study for Medical Implants
著者: Masayoshi Takahashi⋆, Masahiro Nakazawa, Takahiro Nishimoto, Mitsuyuki Odajima, Yasuyuki Shirai, Shigetoshi Sugawa
責任著者: 東北大学未来科学技術共同研究センター 特任教授 高橋 正好
掲載誌: Langmuir
DOI: 10.1021/acs.langmuir.4c03339
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.langmuir.4c03339
【本件・オゾンナノバブル製品に関するお問い合わせ】
ナノスイカンパニー 代表責任者 西本 聖廣
URL: https://nanosui.jp/
本社所在地:静岡県富士市川成島290-5
電話番号:0545-32-9114
E-mail:info@nanosui.net
(用語説明)
※1 酸化チタン
チタンが酸化された化学的に安定な素材です。チタンは比較的軽量でありながら、非常に強靭な特性を持つ金属であり、医療分野をはじめ幅広く利用されています。空気中にさらされると表面に酸化チタンの層が形成され、これが高い耐腐食性と生体適合性をもたらします。また、酸化チタンは光触媒効果を持ち、紫外線を照射すると活性種を生成し、表面の有機物を分解することが可能です。この特性により、歯科用インプラント材の親水性化にも紫外線照射が有効です。ただし、インプラントは一般に複雑な形状をしているため、全ての表面に対して紫外線が均一に作用することが難しく、この点が実用上の課題となっています。
※2 骨芽細胞
骨の生成に関与する細胞の一種で、骨組織中に存在しており、骨形成において重要な役割を果たしています。
※3 原子間力顕微鏡(AFM)
様々な環境下(真空・大気・溶液)で高分子材料の表面構造や組成、力学物性(弾性率、粘弾性、凝着力)の分布をナノスケール分解能での可視化や、力学物性の定量解析ができる手法です。
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歯科インプラントの有機物除去と骨形成を促進する技術。高齢化社会での充実した食生活の実現に向けて、医療現場と患者への負担低減を目指す。
歯科用インプラント材の濡れ性試験
ナノスイカンパニーは、中澤歯科・東北大学未来科学技術共同研究センターの高橋正好特任教授らとの共同で、オゾンナノバブル水を用いた歯科用インプラント材の超親水性化技術を確立しました。この技術により、有機物で汚染され疎水化したインプラント材を、オゾンナノバブル水に10分間浸漬するだけで表面物性を大幅に改善できます。本研究成果は2024年11月25日、米国化学会の専門学術誌Langmuirにオンライン掲載されました。
【研究成果のポイント】
・10分間の処理で表面特性を改善
オゾンナノバブル水にチタン製歯科用ンプラント材を浸漬するだけで、有機物の除去と超親水性化が実現しました。
・長期間の親水性維持
表面に付着したナノバブルにより、親水性が長期間持続することが確認されました。
・幅広い応用可能性
本技術は形状を問わず適用可能であり、人工関節や心臓血管デバイスなど、他の生体材料への応用も期待されています。
【研究の背景】
酸化チタン(※1)は、強靭で化学的安定性と生体適合性に優れ、各種インプラント材として医療現場で広く利用されています。歯科用インプラント治療は、失った歯の機能を回復し、自然な咀嚼を可能にする重要な医療技術であり、スクリュー状に成型された酸化チタンを顎骨に埋入し、人工歯を固定します。このインプラント材には高い生体適合性が求められ、体内に挿入されると血液や体液と接触し骨芽細胞(※2)の付着や増殖を促進することで骨形成を助けます。この過程で、インプラント材表面が親水性であることは迅速な骨結合(オッセオインテグレーション)を促進し、その後の機能回復において重要な要素となります。しかし、手術中や準備段階での有機汚染による表面の疎水化は課題のひとつであり、現場で即応可能な対策が求められています。
一方、ナノバブルは水中に存在する極めて微小な気泡で、優れた持続性を持つ点が特徴です。図1は、原子間力顕微鏡(※3)を用いて、水溶液中に浮遊するナノバブルを観察した画像です。これらのナノバブルは直径10~20nmの球形粒子で、その表面には数ナノメートルの凹凸構造が確認されました。この物性から、ナノバブルは殻を持つ中空の粒子である可能性が高く、「ナノセル」とも呼ばれます。また、ナノバブル内部の気体を変えることで異なる機能を持たせることが可能であり、特にオゾンを包含させて作成したオゾンナノバブルはその強い酸化力が注目されています。
図1 原子間力顕微鏡を利用したナノバブルの観察
【具体的な効果】
この技術では、有機物で汚染され疎水化したインプラント材を、オゾンナノバブル水に10分間浸漬するだけで表面物性を大幅に改善できます。
図2は、処理前後の酸化チタン素材の濡れ性試験結果を示しています。処理前(左図)は疎水性(表面で水滴が広がらない)を示しましたが、オゾンナノバブル水で処理後は超親水性となり、7日間大気中に放置した場合でも(右図)優れた親水性を維持していることが確認されました。
また、実際に利用されているスクリュー型インプラント材を用いて濡れ性試験を実施しました(図3)。処理前(左図)は疎水性を示し、水が下端部で留まりましたが、処理後(右図)では親水性に変化し、水がスクリュー表面を伝って上昇する現象が観察されました。
図4に示すように、インプラント材が親水化する主なメカニズムは、
1.オゾンナノバブル水の強い酸化力による有機物の分解・除去
2.ナノバブル(ナノセル)の表面への付着
によるものです。有機物が除去されることで親水性が回復し、その後ナノバブルが表面に付着することで親水性が長期間維持されると考えられます。
図2 酸化チタン素材の濡れ性試験
図3 歯科用インプラント材の濡れ性試験
図4 オゾンナノバブルによるインプラント材の親水化メカニズム(イメージ)
【今後の展開】
インプラント材をナノバブル水に浸すだけで表面の物性が改善されるため、医療現場での負担軽減が期待されます。さらに、この技術は形状を問わないため、人工関節や心臓血管デバイスなど整形外科を含む幅広い医療分野への応用が見込まれます。また、ナノバブル水には人体の酵素活性を高める効果が確認されており、高齢化社会における健康維持や医療負担の軽減への貢献も期待されています。今後もさらなる応用の可能性を追求し、研究を進めてまいります。
【論文情報】
タイトル: Impact of Bulk Nanobubble Water on a TiO2 Solid Surface: A Case Study for Medical Implants
著者: Masayoshi Takahashi⋆, Masahiro Nakazawa, Takahiro Nishimoto, Mitsuyuki Odajima, Yasuyuki Shirai, Shigetoshi Sugawa
責任著者: 東北大学未来科学技術共同研究センター 特任教授 高橋 正好
掲載誌: Langmuir
DOI: 10.1021/acs.langmuir.4c03339
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.langmuir.4c03339
【本件・オゾンナノバブル製品に関するお問い合わせ】
ナノスイカンパニー 代表責任者 西本 聖廣
URL: https://nanosui.jp/
本社所在地:静岡県富士市川成島290-5
電話番号:0545-32-9114
E-mail:info@nanosui.net
(用語説明)
※1 酸化チタン
チタンが酸化された化学的に安定な素材です。チタンは比較的軽量でありながら、非常に強靭な特性を持つ金属であり、医療分野をはじめ幅広く利用されています。空気中にさらされると表面に酸化チタンの層が形成され、これが高い耐腐食性と生体適合性をもたらします。また、酸化チタンは光触媒効果を持ち、紫外線を照射すると活性種を生成し、表面の有機物を分解することが可能です。この特性により、歯科用インプラント材の親水性化にも紫外線照射が有効です。ただし、インプラントは一般に複雑な形状をしているため、全ての表面に対して紫外線が均一に作用することが難しく、この点が実用上の課題となっています。
※2 骨芽細胞
骨の生成に関与する細胞の一種で、骨組織中に存在しており、骨形成において重要な役割を果たしています。
※3 原子間力顕微鏡(AFM)
様々な環境下(真空・大気・溶液)で高分子材料の表面構造や組成、力学物性(弾性率、粘弾性、凝着力)の分布をナノスケール分解能での可視化や、力学物性の定量解析ができる手法です。
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(2024/12/12 13:50)
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