インタビュー

必要なのは刑罰ではなく支援
コカイン使用のピエール瀧容疑者
~依存症専門医・松本俊彦氏が訴え~

 ◇コカイン報道は誰のため

--今回の事件の影響をどう見る

 メディアが報じないわけにはいかないが、テレビはコカインの白い粉を出し、紙幣を丸めて吸うところを映像で詳細に説明している。こうした報道が誰の助けになるのか。依存症から回復しようと治療している患者さんは欲求が刺激されて再使用の危険にひんしており、薬物のリスクの高い若い人は、かえって関心を持つ。

 テレビはピエール瀧さんたたきに走り、孤立させている。これを見ている依存症の当事者は支援につながらなくなる。

コンサートでトランペットを奏でるマイルス・デイビス=1991年07月06日、仏パリ【AFP=時事】

 ◇回復・活躍するミュージシャン 

--著名人へのバッシングが厳しくなった

 ある時期から著名人や芸能人の薬物問題に対する指摘が厳しくなった。テレビは視聴率が喫緊の課題になっているのかも。インターネットによってうわさが増幅されて、いじめの図式ができやすい、たたきやすい状況ができているのかもしれない。 

 法的責任を果たすため少しお休みする時間があるかもしれないが、終わったら積み上げたものの延長線上にキャリアを積み上げてほしい。薬物や大麻の使用で捕まったあとに復帰して、人々を感動させているミュージシャンはたくさんいる。そういう道を探るべきだと思う。

 ◇排除の先にあるのは

--どんな社会的な取り組みが必要

 性犯罪とか、暴力犯罪は被害者がいるが、薬物の自己使用は被害者が明確でない。あえて言えば健康を損なっている本人。法律で禁じているのは、国民の健康を守り、社会の安全を守るためだが、一つの国際的なルールとして、被害者なき犯罪の刑罰は行為によって自身が被る健康被害を超えてはならないという原則がある。 

 日本の場合は、これをはみ出して厳しいものになっており、著名人はメディアによる社会的な制裁まで加えられる。 

 ピエール瀧さんの音楽を配信停止にすることなどは、その影響をよく考えてほしい。収入が途絶えた後、会社に勤められるのか。どこも雇ってくず、経済的に困窮。闇社会の人から「うちのキャバクラの雇われ店長をやってくれ」といった話が来て、それを受けるとまた薬が寄ってくるくる。

東京税関が押収したコカイン=2018年11月27日、東京都江東区【時事】

 ◇国連は薬物を「非犯罪」と決議

--薬物をめぐる国際的な状況は

 日本では「薬物絶対ダメ」的な啓発がどんどん浸透してきて、薬を使った人を排除する方向性ができているが、国連は薬物使用を非犯罪化し、健康問題として支援の対象にせよという決議を出ている。

 日本はこれに反している。日本独自のやり方があるとしても、議論があっていい。テレビのコメンテーターは「法律の一線を破ったからダメ」というが、冷静に考えてみる必要があるのでは。ナンセンスな法律はないのか。学校で下着の色を指定する「ブラック校則」のような「ブラック法律」はないのか。

 薬物依存症の臨床では、半数は覚せい剤などの違法薬物だが、半数は処方薬や市販薬の乱用。薬物の怖さは違法、合法に関係がない。

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