インタビュー

必要なのは刑罰ではなく支援
コカイン使用のピエール瀧容疑者
~依存症専門医・松本俊彦氏が訴え~

--ピエール瀧容疑者へのメッセージを

 コカインをやめようとしながらも、うまくいかなかった経緯なら安心して相談してほしい。治療につながってほしい。一人で悩むべきではない。薬物に詳しい人と相談しながら進めてほしい。

依存症理解啓発イベントのトークセッションに臨む元プロ野球選手の清原和博さん(右)と松本俊彦氏=2019年3月6日、東京都中央区【時事】

依存症理解啓発イベントのトークセッションに臨む元プロ野球選手の清原和博さん(右)と松本俊彦氏=2019年3月6日、東京都中央区【時事】

 ◇一気に冷え込んだ機運

--私たちは薬物とどう向き合うべきか

 薬物は再犯率がとても高く、刑務所を出た直後が一番使用のリスクがある。本当に社会の安全を守りたいのなら、有効な方法として科学的に証明されているのは支援。刑罰ではない。

 国として国民として、社会を安全に保つための方策をサイエンスに依拠するのか、(刑罰重視の)イデオロギーにこだわるのか冷静に考えてほしい。考えた上でイデオロギー、信念がすべてとなれば、日本はそれだけの国なんだと思う。

 今年に入って依存症の理解・啓発活動にたずさわった。最後は元プロ野球選手の清原和博さんが特別ゲストとして登場し、薬物依存からの回復を目指している現状を語ってくれた。これによって依存症への偏見を解く機運が高まったが、(今回の事件や報道で)暖まった世間の声が一気に冷え込んだ感じがする。(解説委員・舟橋良治)


【プロフィル】松本俊彦氏(まつもと・としひこ)
 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部長、薬物依存症センター長
 1993年佐賀医科大卒。2004年国立精神・神経センター(現、国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所 司法精神医学研究部専門医療・社会復帰研究室長。同研究所 自殺予防総合対策センター自殺実態分析室長などを経て、15年同研究所薬物依存研究部長。17年薬物依存症治療センター長併任
 日本アルコール・アディクション医学会理事。日本精神科救急学会理事


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