治療・予防

早期治療で見た目もきれいに
手術やけがによる傷痕

 手術やけがなどの傷痕が赤く硬く盛り上がった状態を肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドと呼ぶ。痛みやかゆみを伴うことが多く、見た目も目立つため、悩んでいる人が多い。「命が助かったのだから傷痕は仕方がない」という認識の医師も多い中、日本医科大学付属病院(東京都文京区)形成外科・再建外科・美容外科の小川令部長は「肥厚性瘢痕やケロイドは早期に適切な治療を行えばほぼ治ります」と話す。

 ▽原因は皮膚の炎症

 手術やけが、やけどなどによる傷が治る過程で、傷をふさぐための組織が過剰に増殖して、しこりになったものが肥厚性瘢痕やケロイドである。共に皮膚の深い部分(真皮)で続く炎症で、肥厚性瘢痕は傷の範囲内に限られ徐々に軽快するのに対し、ケロイドは傷の範囲を超えて周囲に拡大する。特にケロイドは炎症が強く、体質的な要素が強いとされている。共に原因は完全には解明されていない。

肥厚性瘢痕とケロイドの特徴や症状

肥厚性瘢痕とケロイドの特徴や症状

 患部が大きいと体を動かすことができなくなり、生活の質(QOL)を低下させる。胸部や腹部、肘や膝など日常的に伸縮する部位に起こりやすく、高血圧の人や妊娠中の女性に多いという。

 「血圧の高い人は皮膚で炎症が起こりやすく、妊娠中の女性は女性ホルモンのエストロゲンの分泌が増えて血管が広がり、それぞれ炎症を悪化させます」と小川部長。

 ▽さまざまな治療が選択可能

 早期に適切な処置をすれば治る肥厚性瘢痕やケロイドの患者に対し、「体質だから、の一言で済ませる医師もいます」と、小川部長は苦言を呈する。

 治療法としては、抗炎症作用のあるステロイドの貼り薬を主体とした手法で治癒が期待できる。他にも、抗アレルギー薬である「トラニラスト」の内服や、外科的手術と放射線治療、保険適用外だがレーザー治療など、さまざまな方法が選択できる。小川部長は、手術では直線ではなくジグザグ状に皮膚の緊張状態を解くよう切除し縫合することで炎症を早期に軽減させる方法を実践している。

 治療期間は、受診が早ければ早いほど短縮する。数カ月から数年かかるといわれるが、ほとんどの傷痕は見た目では分からなくなり、痛みやかゆみも消えて自由に動かせるようになる。小川部長は「約9割の人が手術なしで治っています。手術をするか、手術しないで治すかは、患者さん自身で選ぶことができるので、傷痕が気になる方は、専門的な知識を持った形成外科に相談してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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