ダイビング事故は認識不足から
事前に健康チェックを
年齢を問わず男女ともに人気があるスキューバダイビング。水中は地上とは違う環境のため、体調不良による事故を防ぐには事前の健康チェックが必須となる。ところが、参加者、ダイビングショップ、医師のいずれもが、自身の病気や受診の重要性、潜水医学を知らないことが多く、事故につながるケースが少なくない。ダイビングインストラクターでもある三保耳鼻咽喉科(横浜市)の三保仁院長は「ダイビング時の体調不良による事故は、起こるべくして起きたケースが大半です」と話す。
▽健康状態を確認
スキューバダイビングを始めるには、ダイビングショップを通じて講習に参加し、指導機関から認定書を取得する必要がある。その際、ダイビングができる健康状態かどうかをメディカルチェックシートに記入するが、一つでもチェックが入ると医療機関を受診しなければならない。医師はチェック項目に基づいて診察し、最終的な判断を下す。これが大まかな流れだ。
事前の健康チェックで事故を防ごう
ところが、三保院長によると、実情は少し違うようだ。「参加者が勝手に判断してチェックが必要な項目にチェックをしなかったり、利益を優先するショップが受診の必要性を参加者に説明しなかったりすることがあります。受診しても担当医が潜水医学を知らないと、潜ってはいけない人に許可を出してしまうケースも見られます」と指摘する。
▽正直に申告し受診を
気胸やてんかんなどは水中で再発しやすいため、症状が出ていなくても潜ることはできない。外リンパ瘻(ろう)などの内耳の病気や、運動制限がある心臓疾患などがあっても潜れない。
反対に、チェックが付いても条件付きであれば問題がないケースも多いという。例えば高血圧の人でも、副作用のリスクが低い降圧薬を服用し、血圧が常に正常値内に保たれていればダイビングは可能だ。また、ぜんそくの既往歴があっても、潜る際は治療が不要な状態で、ぜんそく負荷試験で異常がなければ潜ることはできる。
三保院長は「メディカルチェックの項目に印が付いたらダイビングができないということではないので、まず正直に記入することが重要です」と強調する。その上で、潜水医学に詳しい医師を受診するのが望ましいと語る。
体調不良によるダイビングの事故は45歳以上に多いという。「メディカルチェック後も毎年人間ドックを受け、引っ掛かる項目があったら受診し、アドバイスを受けてください。それが、事故を防ぐ最善策です」と三保院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/07/27 08:00)