治療・予防

変わる多発性骨髄腫の治療
近い将来治癒も可能な段階に

 「血液の製造工場」である骨髄で異常な細胞が増え、正常な血液細胞を作れなくなる多発性骨髄腫。この15年間に新薬が相次いで登場し、治療成績が劇的に向上した病気の一つだ。日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木憲史センター長は「10年生存率は、1980年代は3%程度でしたが、現在では50%程度まで向上しています」と語る。治癒を目指すことも可能になっているという。

 ▽異常な細胞が骨髄で増殖

 多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄で異常な細胞(骨髄腫細胞)が増え続け、正常な血液細胞が作られなくなる。骨髄腫細胞は免疫機能を持たない異常なタンパク質を大量に産生したり、骨を壊す破骨細胞を活性化したりする。そのため、貧血、感染症、腎臓の障害、骨折、腰痛などが表れる。国内の罹患(りかん)数は年間約7500人。

 鈴木センター長によると、この病気は時間の経過とともに原因遺伝子が変化し、悪性度の高い細胞に変わるため、治療にてこずるのだという。

 この2~3年に登場した薬剤には新しい作用があり、従来の薬と併用することで、そうした手ごわい骨髄腫細胞に対しても治療が可能だ。エロツズマブやダラツムマブは、免疫機能を高めて骨髄腫細胞を攻撃する抗体医薬というタイプ。イキサゾミブは骨髄腫細胞の増殖を抑制する「プロテアソーム阻害薬」という種類の薬で、飲み薬だという特徴がある。

 ▽初回の治療で徹底的に

 鈴木センター長は「新薬の使用で、患者は長期間生存できるようになっています。近い将来、20~30%の人は治癒を目指すことができるのではないでしょうか」と期待を寄せる。また、「最初に、複数の薬剤を併用した強力な治療で骨髄腫細胞を検出できない程度まで減少させ、それを維持することが重要です」と強調する。

 ただ、新薬による治療には1カ月に100万円以上の医療費がかかる。公的医療保険と高額療養費制度を利用すると、患者の負担は多くても月に数十万円で済むが、有効な治療を低コストで行う方が国の財政の面からも望ましい。

 そこで、骨髄腫細胞を検出できない状態が1~2年続いたら、治療をやめて経過観察するという方法が検討されている。また、事前に遺伝子を検査して、効果が期待できる人にだけ投与する新薬の開発も進められている。個々の患者に有効な治療を行いつつ、医療費を抑える取り組みとして注目される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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