医学生のフィールド
移植医療の高みに挑む若手外科医に学ぶキャリア形成
医学生が企画、オンライン講演会
キャリア形成に悩む若者は多い。カナダ・トロント大学の移植外科でリサーチフェローを務める傍ら、ツイッターで1万人以上のフォロワーに対し、医療者のキャリア形成のヒントになるメッセージも数多く発信、注目を集める「雑草外科医」こと後藤徹医師のオンライン講演会が7月1日に開かれ、100人の医学生や医師が参加した。
オンライン講演会を企画したのは、筑波大学医学類5年の中山碩人(ひろと)さんら。「自身のキャリア形成に関して悩む医師・医学生は非常に多いが、ロールモデルに出合う機会が少ないのが現状で、自分らしいキャリアを考えるきっかけをつくりたい」と後藤医師に協力を依頼し、実現した。
常に挑戦を続けてキャリアを形成してきた新進気鋭の医師の歩みから学べることは何か。以下、講演内容をまとめて紹介する。(文・構成 伊藤春花、稲垣麻里子)
◇本気で学んだら在学中にどこまでできるか
医師になるからには自分の患者には最高の医療を提供したいという思いが強かった。現在の医療水準で助けることができない病気に対して、新しい医療技術の開発やメカニズム解明の研究をしたいと考え、学生時代にカリキュラム外で留学と研究、そして早期からの臨床実習を経験した。
秋田大学医学部に入り、1年生の夏に英国のオックスフォード大学に語学留学、春期休暇には米国のピッツバーグ大学医学部に研究留学した。この際に移植手術の現場を見学したのをきっかけに移植医療に魅了された。帰国後に秋田大学の消化器外科教授が肝臓手術と移植治療のスペシャリストであることを知り、この教授の元を訪れて外科治療に対する思いやビジョンを語り合い、消化器外科医への道を決意した。
2年生から講義後は外科の臨床、基礎カンファレンスに参加し、夜はラットを用いた手術研究に励んだ。3年生では大学病院の手術室に出入りするようになり、〝実際の外科医〟を学び始めた。4~6年生では急性期病院や大学病院での手術見学・助手を経験し、座学ばかりにならないよう、常に実践に重きを置く学生生活を送った。基礎研究の成果は日本外科学会総会や欧州の研究会で発表し、学長賞を受賞した。
医学生は、講義やテストをこなす生活だけでなく、カリキュラム外で自分の個性を育てることが重要。自分が純粋に興味のある科・領域のエキスパートを訪ね、思い切り学び、自分の目と肌で感じながら、将来目指す医師像を見つけてほしい。
(2020/07/31 07:00)