医療ADR

【連載第1回】医療トラブル、話し合い解決も=ADRをご存じですか?

 手術を受け退院した後も、痛みが取れずまひが残る。「自分は不適切な治療の被害者になったのかもしれない」と思ったとき、あなたはどうしますか。話し合いで解決できればいいが、誰に相談すればよいかも分からない。医師に直接「医療ミスではないですか」と聞いたら、とても驚いた顔をされた。一生懸命手を尽くしてくれた医師を疑い、このままモヤモヤした気持ちで終わりたくはない。そうかといって裁判も気が進まない。そうしたときの解決の場として、裁判外紛争解決手続(ADR=Alternative Dispute Resolution)があるのをご存じですか。(弁護士・児玉安司)

 ◇裁判避け、迅速対応

 トラブルやもめ事が生じたときに交渉で解決しようとしても、相手と意見が食い違ってしまえば話はまとまらない。双方が法律の素人であれば、どういう解決の仕方が正しいのか分からず、互いに不愉快になるだけ。誰でも頭に浮かぶのは訴訟だが、日本社会で「裁判沙汰」はイメージが悪く、提訴のハードルはまだまだ高い。

 これに対しADRは訴訟によらず、公正な第三者が関与して解決する手続き。英語のDispute Resolutionは「紛争解決」、Alternativeは「裁判以外の選択肢」を意味する。

 ADRは、コーヒーでやけどをしただけでも提訴される「訴訟社会」米国などで発展。長期化しやすい裁判を避け、それ以外の選択肢を作り出して紛争を解決しようという努力が続けられ、交通事故や離婚など身近な問題から大規模な環境汚染の賠償に至るまで、さまざまな形のADRが誕生し活用されている。

 日本の状況は米国とは異なるが、紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続きとして、特に第三者の専門的な知見が必要な分野でのニーズが高い。重要性が増し法整備を急いだ結果、民間紛争解決手続について、2004年12月1日に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)が公布され、07年4月1日から施行された。

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