医療ADR

【連載第1回】医療トラブル、話し合い解決も=ADRをご存じですか?

 ◇各地に広がるADR

 ADR法制定前は地域によって、取り組みに濃淡があった。弁護士会ADRは、1990年3月に第二東京弁護士会が仲裁センターを立ち上げたのが始まり。以後多くの会が仲裁センター、紛争解決センターなどの名称でADR機関を設立し、地域の実情に応じて医療紛争を含むさまざまな紛争を解決してきた。

 医事紛争の激増と法制定を背景に、全国の医療訴訟の4分の1近くが集中するとされる首都東京では、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会(合わせて東京三弁護士会=東京三会)が、06年6月に「医療事故紛争とADRのあり方に関する提言書」を取りまとめ、07年9月、各会のADR機関のそれぞれに医療ADR部門を設置。「東京三会医療ADR」を発足させた。

 さらに,札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡などの高裁所在地に加え、京都や岡山、愛媛などの弁護士会ADRも日弁連ADRセンターの下で連携しながら、地域の実情に合わせた医療ADRを設置し、医事紛争解決に実績を上げるようになった。これらの弁護士会医療ADRへ年間200件近くの申し立てがあり、特に医療紛争解決の先駆的な取り組みをしてきた愛知県では訴訟件数を上回っている。

 弁護士会以外では千葉県で独立のADRが開設され、茨城県では医師会を中心に弁護士と連携したADRがスタートするなど、医療ADRはこの十年で大きく発展した。

 児玉安司(こだま・やすし) 1958年5月愛知県生まれ。83年東京大学法学部卒。91年新潟大学医学部卒。横須賀アメリカ海軍病院勤務を経て、94年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2010年から日弁連ADRセンター医療特別部会幹事、15年同部会長。(了)

→〔第2回へ進む〕使いやすい制度で和解目指す=公平性、専門性を担保―弁護士会ADR






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