治療・予防

筋強直性ジストロフィーとは?
世界初の根本治療薬開発へ 中森雅之山口大学教授に聞く①

 ◇症状が気になったら早めに脳神経内科へ

 ー自覚症状が気になったら、どの科を受診すればよいですか。

 脳神経内科で診療します。しかし、現実には筋力の低下で整形外科、不整脈は循環器内科、白内障は眼科など、症状に応じてさまざまな診療科を受診することが多いようです。それらの診療科の医師に、筋強直性ジストロフィーについての認識があれば、脳神経内科に紹介してもらえるのですが、患者数が少ないこともあり、分からないことが少なくありません。開業医の先生方にも、ご理解いただき、脳神経内科にご紹介いただけるよう働き掛けているところです。

 特に、呼吸器や循環器に表れる症状は、突然死をもたらし、この病気が寿命を短くする最大の要因です。従って、そのリスクをできるだけ早期に把握し、状況に応じた的確なコントロールをすることは非常に重要です。

山口大学医学部付属病院

山口大学医学部付属病院

 ◇遺伝子検査で確定診断

 ー医療機関では、どのような検査が行われますか。

  まずは問診、視診、徒手筋力テストなどでだいたいの見当はつきますが、確定診断は血液を採取して行う遺伝子検査の結果によります。

 問診では、現在気になっている症状や家族歴について詳しく質問します。身内に筋肉の病気の人はいなかったか、早くに亡くなった人はいないか、若年性(30~40代)で白内障になった人はいないか、などを尋ねます。

 「西洋斧様顔貌」といって側頭筋が落ちてきて細面な感じになり、前頭部が禿げてくる場合があるため、典型的なケースでは、診ただけで筋強直性ジストロフィーと分かることもあります。

 手や首、肩の筋肉(胸鎖乳突筋など)、足首を上げる前脛骨筋が他の筋肉と比べて初期から落ちやすいと言われています。このため、ペットボトルのふたが開けられない、つまづきやすい、などの症状が表れます。

   また、ほとんどの場合、筋強直症状という特徴的な症状があります。簡単なチェック方法は、思い切り手を握ってもらい、「はい、広げてください」と言うと、健康な人はすぐに開けますが、この病気になると開くのがゆっくりになります。また、診察用のハンマーで母指球を叩くと、手のひらがギュッと強直する「パーカッションミオトニー」という症状が出たり、舌圧子(ぜつあっし)という木の板を舌の上に置いて、その板をポンと叩くと舌がギュッと強直したりすることもあります。

   確定診断は、血液を採取して行う遺伝子検査で行います。結果が出るまで、およそ1カ月かかります。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

中森教授

中森教授

 中森雅之(なかもり・まさゆき) 99年年大阪大学医学部卒業、同付属病院神経内科、00年大阪厚生年金病院神経内科、02年国立刀根山病院神経内科、03年大阪大学大学院医学系研究科博士課程、07年同課程修了(医学博士)。同年米国ロチェスター大学神経学、12年大阪大学医学研究科神経内科学、23年1月山口大学大学院医学系研究科臨床神経学教授。



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