Dr.純子のメディカルサロン

がんのセカンドオピニオン 久保田馨・日本医科大教授に聞く

 海原 セカンドオピニオンを受けることで担当医の気分を損ねるということはないのでしょうか。そのあたりが患者さんサイドとしてはとても気がかりですから。

 久保田 セカンドオピニオンはいわゆるドクターショッピングとは異なります。手順を踏み、また担当医も診療情報を提供することにより病院収入が得られますから、手間をかけてもらっているという遠慮は不要ですよ。

 海原 患者さんのご本人が遠方で来られない場合は、ご家族がセカンドオピニオンを受けることは可能でしょうか。

 久保田 大丈夫です。その場合、やはり担当医の診療情報提供書をお持ちください。

 海原 以前、遠方に住む高齢の肺がんの患者さんのご家族を、久保田先生のセカンドオピニオン外来にご紹介したことがあります。患者さんの娘さんの1人が私の知人で、彼女は地方の医療機関にかかっていて大丈夫なのかと心配していました。

 肺がんはかなり進行して脳や肝臓などにも転移が認められ、患者さん本人は東京へ来ることができず、2人の娘さんがセカンドオピニオン外来を受診しました。結果的にはその地方の病院で極めて適切な治療がされていることが分かり、ご家族が非常に安心し、納得して治療を継続されました。

 ステージ4でしたが、その後数年間治療を継続し、娘さんの結婚式には一時退院して花嫁さんの手を取って式に臨まれました。その後患者さんは亡くなりましたが、ご家族で残された時間を大事にされ、家族の絆を深めたと伺いました。

 納得して治療を受けられることは患者さんにとっても家族にとっても、何より大事なことだと実感しました。

 久保田 そうですね。以前やはり肺がんのステージ4の患者さんで大腸にもがんが見つかった女性がいらして、その夫の方から相談を受けました。こちらに転院して治療を受けたいということでしたが、状況から見て転院や積極的な治療はかえって症状を悪くする可能性があるとお伝えしてご家族が納得されました。こうした気持ちの上の納得感と医師とのコミュニケーションが治療には非常に大事です。

 海原 先生と共同で行ったがん患者さんの治療満足度に関する調査(Umihara J, et al. J Nippon Med Sch. 2016;83:235-247、2013年世界肺がん学会シドニー開催にて発表)でも医師に対する信頼感と医師とのコミュニケーションががん患者さんの治療選択満足度を高めることが明らかになっていますね。

 久保田 信頼できる医師と治療について話し合い、納得した上で治療に臨むことが患者さんの予後を改善し、生活の質、満足感を高めるのです。

 海原 ありがとうございました。

(文 海原純子)

 →〔参考〕日本医科大付属病院セカンドオピニオン外来の問診表

 


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