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疲労と老化は共通する
~予防効果はニンニクにあり~

 「疲れたなあ」。会社員や教師、主婦ら、こう感じる人は多いだろう。慢性的な疲労はつらく、日常にも影響する。最近、この分野の研究が進み、疲労と老化に共通することがあることが分かってきた。食と健康に詳しい専門家は世界的な動向も踏まえ、ニンニクの予防効果に注目している。

 日本疲労学会理事長で神戸大学大学院の渡辺恭良・特命教授は長年、疲労の研究を重ねてきた。日本は経済協力開発機構(OECD)諸国、34カ国中で主観的健康度が最下位。最近行われた疲労に関する大規模調査によると、「疲れている」人の割合が8割を超えている。

今、「脳の疲労」が課題となっている

今、「脳の疲労」が課題となっている

 これまでの研究から疲労・慢性疲労、老化、疾患の発症に共通するメカニズムがあることが分かった。生体酸化の進行と抗酸化機能の低下を、渡辺教授は「さびつき」と呼ぶ。次に修復エネルギーの低下、検知した免疫系が炎症を起こし、これらを感知する自律神経機能の低下、脳機能・感覚機能・認知機能の低下と続く。

 渡辺教授は「疲労と老化は密接に関連しながら負のスパイラルを描く」と言う。

 近年、クローズアップされているのが「脳疲労」だ。インターネットやSNS、生成AIなどによる情報過多が脳を疲れさせ、上質な睡眠や十分な休息取れないことが脳疲労の慢性化につながる。

健康食品として「GGOBE」が注目されている

健康食品として「GGOBE」が注目されている

 ◇老化しない食べ方

 沖縄県は長年、平均寿命の第一位や上位に位置してきた。ところが、最近は事情が異なる。2020年は男性43位、女性16位と大きく下がった。食生活の変化が影響しているようだ。

 では、平均寿命を延ばすための食生活はどうすればよいのだろうか。老化しない食べ方のこつがあるという。朝、昼、晩と3食を食べることが健康には大事だとされてきた。しかし、日本抗加齢医学会評議員で満尾クリニックの満尾正院長は「1日に3食食べる必要はない。おなかが減ったというサインが大事だ」と話す。

 空腹は消化の準備ができたということを示す。空腹でない時に食べると細胞内に不要な物がたまる。

 「空腹を感じないとホルモンの分泌が妨げられる。解毒システムを担う胆汁の生産は空腹時の方が多い」

 「GGOBE」という言葉を知っているだろうか。「ガーリック、ジンジャー、オニオン、ブロッコリー、卵」を指す。ガーリックはニンニクのこと。ニンニクを切ったり、つぶしたりする時に生成されるアリシンが抗菌・抗ウイルス作用や血行促進、コレステロール低下に効果がある。

ニンニクから作られるSACに期待がかかる

ニンニクから作られるSACに期待がかかる

 ◇ニンニクはスーパーフード

 疲労を回復するための栄養食品の一つにニンニクが含まれる。日本大学薬学部の小菅康弘教授は「ニンニクはスーパーフードだ。滋養強壮と疲労回復効果が注目されている」と話す。

 滋養強壮の食品としてのニンニクはがん予防に効果がある食品群の最上位に位置付けられ、抗炎症効果のある食品群でも上位に来る。ニンニクの滋養強壮・疲労回復効果の仕組みはどうなっているのか。小菅教授によれば、S―アリルシステイン(SAC)というニンニク由来の希少成分がポイントだと言う。2000年頃からさまざまな作用が確認され、年間で30本以上の論文が発表さている。大事なのは、酸化ストレスに関与する酵素の発現や活性を抑制する作用だ。

 アリシンなどは刺激性(抗菌作用)が強く、ニンニクを食べ過ぎると胃腸障害を起こす恐れがある。SACは刺激性が少ない。

 小菅教授は「SACにより慢性炎症の負のスパイラルを抑制することで、脳の疲労の軽減や老化を防止することが考えられる」と期待する。

 アルツハイマー病予防にも

 アルツハイマー型認知症アルツハイマー病)の原因とされるアミロイドβは神経細胞に対する毒性を持ち、細胞の死を誘発する。SACにはアミロイドβによる細胞死を抑制する働きがあるが、アルツハイマー病が発症する前からアミロイドβが蓄積されるため、予防投与、しかも長期にわたり投与が必要だ。ただ、薬は医師の診断が必要で、限界があるという。この点で、SACは食品のニンニクに含まれ、日常的に接種しているものなので予防投与も可能だ。(鈴木豊)

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