特集

パートナーがうつに
アスペルガー症候群の二次的障害

 他人との共感性が乏しいアスペルガー症候群を持つ人と安定したコミュニケーションを成立させるのは難しい。配偶者がアスペルガー症候群の場合は、日常的に接するパートナーが体調を崩し、うつを起こしてしまうこともある。こうした「カサンドラ症候群」と呼ばれる症状についてどんぐり発達クリニック(東京都世田谷区)の宮尾益知院長に聞いた。

 ▽理解されない孤独

 アスペルガー症候群とは、発達障害の一つで、知的障害がないものを指す。宮尾院長は「社会性やコミュニケーション能力、想像力に障害があるため、協調性に欠ける、相手の表情や思いをくみ取れない、変化に対応できないなどの特性があります」と説明する。

仲間をつくるのも治療法の一つ

仲間をつくるのも治療法の一つ

 アスペルガー症候群の人の中には知能が高く、社会で成功している人も少なくない。しかし、競争原理が支配するビジネス世界とは異なり、家庭では家族との心情的な交流が必要になる。

 社会的地位がある夫や妻であっても、安定したコミュニケーションが取れなければ、そのパートナーは一人でいるような孤独を感じかねない。しかも、経済的に恵まれていることが多いだけに、他人に話しても信じてもらえず、苦しみに拍車が掛かる。こうした状況に追い込まれると、頭痛や不眠、うつ、女性の場合には生理不順といった症状が表れることがある。

 ▽あなたは悪くない

 アスペルガー症候群を持つ人のパートナーに起こるこうした二次的な障害は、ギリシャ神話に登場する、真実を伝えても信じてもらえなかったトロイの王女の名前から、カサンドラ症候群と呼ばれている。

 宮尾院長は「カサンドラ症候群の人にぜひ伝えたいのは『あなたは悪くない』ということです。罪悪感を捨て、周囲に共感してくれる人をつくることが重要です」と強調する。

 そのため、専門医の診察やカウンセリングだけでなく、カサンドラ症候群の人が集まった自助グループなどなら仲間をつくりやすく、苦しみから抜け出すのにも効果的だという。一人で思い悩まないことが大切だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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