精神障害ある親を持つ子どものケア
安心して暮らせる環境づくり
精神障害のある親を持つ子どもの多くは、親のことも自分のことも、誰にも相談できずにいる。そんな子どもたちが孤立しないよう支援活動を行っているのが京都精神保健福祉推進家族会連合会(京家連)だ。京家連で相談員を務める京都ノートルダム女子大学(京都市)現代人間学部の佐藤純准教授に聞いた。
子どもが安心できる環境づくりが大切
▽2カ月に1度集会
京家連では、精神障害を持つ人やその家族が、悩みや苦しみを抱えたまま孤立しないよう相談窓口を設置し、交流会などを催している。また、親が精神障害者である子どものための会をつくり、2カ月に1度、集会も開いている。
佐藤准教授は「相談に来る人の多くが精神障害のある子どもを持つ親です。精神障害のある親を持つ子どもが相談に来ることはめったにありませんが、むしろ子どもたちは孤立しているのではないでしょうか」と心配する。
父親が精神障害であっても、多くの子どもは母親から口外することを止められている。その上、「母親は父親にかかりきりになるので、子どもは家事を担うなど自分の時間がなくなり、相談もできません。何より、それが当たり前だと思い込むことが問題です」
▽子どもの話を聴いて
子どもは成長とともに友人の家に遊びに行くようになると、自分の家庭環境の特殊性に気付くようになる。しかし、教師や友人に打ち明けても理解を得られない、あるいは距離を置かれてしまうといった新たな現実に直面することになる。
佐藤准教授は「子どもの家庭環境を理解し、寄り添い、安心して暮らしていけるよう一緒に考えていきたい。ただ、参加者は今のところ30~40歳代が中心です。自立できる年代になるまではこうした場に相談に来ること自体難しいのでしょう」とみる。
親のことを隠さず話して聞いてもらうだけでも安心感を得られ、孤独感は和らぐ。佐藤准教授は「子どもにはいつも声を掛け、いつでもその話に耳を傾けるような環境を地域につくることが大切です」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/21 06:00)