治療・予防

先天的な肛門の異常―鎖肛
術後サポートで通常の生活も

 生まれつき肛門が正常に形成されていない「鎖肛」という病気がある。聞き慣れない名前だが、消化管の先天異常の中では多い病気で、手術により日常生活を支障なく過ごすことができるようになる。近畿大学医学部奈良病院(奈良県生駒市)小児外科の米倉竹夫教授に話を聞いた。

多くが手術で支障なく生活できるようになる

多くが手術で支障なく生活できるようになる

 ▽遺伝性なく男児に多め

 口から肛門に至る消化管の中でも、直腸と肛門は先天的に閉鎖が起きやすい部位だ。鎖肛は直腸肛門奇形とも呼ばれ、お尻に肛門が開いていなかったり数センチ位置がずれていたりする。また、直腸の末端が本来とは異なる位置につながる瘻孔(ろうこう)が生じることもある。体表だけでなく、男児では尿道、女児では子宮や膣(ちつ)と直腸がつながってしまうという。

 米倉教授によると、鎖肛は新生児のおよそ5000人に1人の割合で発生し、男児にやや多く、遺伝性はないという。瘻孔がある場合、男児では尿に便が混じる、女児では膣から便が出るなどの症状が表れることもある。

 鎖肛は、肛門とつながる直腸末端の位置により三つのタイプに分かれる。直腸末端が肛門部の皮膚近くまで届いているものを低位型といい、皮膚から離れるに従って中間位型、高位型となる。

 ▽手術後には排便訓練を

 多くは、生まれてすぐに体温を測るときに、直腸に体温計が入らないことで見つかる。「正確な病型の診断には、レントゲン検査などが必要です。その他の内臓に先天性疾患を合併している場合があるので、全身の検査も行います」と米倉教授。

 治療法は鎖肛のタイプにより異なる。低位型であれば、正常な位置に肛門を作る手術が行われる。中間位型・高位型では便の出口となる人工肛門を腹部に作る手術を行い、乳児の体重が5キロ程度になるまで待ってから正常な位置に肛門を作る。

 手術後は排便訓練が必要になる。特に中間位型・高位型では肛門周辺の筋肉や知覚が未成熟で、便意を催しにくく排便機能も弱いので、便秘あるいは便を漏らすことがあるからだ。

 「便を漏らすことなく、排便したいときに残さず排便できるようになることが、日常生活を支障なく送るために必要です。術後はほとんどが正常の排便機能を身に付けられるようになりますが、高位型では家族や医師の長期的なサポートが必要となることがあります」と米倉教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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