一流に学ぶ 「美と健康」説くスポーツドクター―中村格子氏

(第8回)
「大人のラジオ体操」がブレーク
震災支援で浮かんだアイデア


 ◇動きの意味、現代風に分かりやすく

 「大人のラジオ体操」でも、体操自体はごく普通のラジオ体操と何も変わらない。それが、なぜここまでヒットしたのだろうか。

 「一言でいえば、運動指導のポイントが今までと違うからだと思います。『こうしなくてはならない』という教え方ではなく、一つ一つの動きの意味を知って、これにはこういう効果があるから、こうした方が得なんだよ、と教えると、モチベーションが変わるんですよね」

 あえて「大人の」ラジオ体操としたのには理由がある。

市民に運動やラジオ体操の効果を説き、実演指導する中村格子氏=2013年9月、静岡県富士宮市
 「子どもにとってのラジオ体操は、毎日続ける継続力を育て、上級生が下級生を引っ張っていく教育的な意味もあって、楽しく元気よくやって、順番やだいたいの形を覚えておけばいい。大人になったら、正しくやっていくと効果バツグンで健康に役立つという、ラジオ体操の本当の意味を理解していけばいいと思うんです」

 子ども時代にやっているだけに、大人は誰でも取っつきやすいし、改めて体操の意味が分かると、取り組みやすくもなる。

 「戦後、ラジオ体操第一は老若男女、誰にもできることを基本につくられました。当時の国の策定要綱で、私が一番好きなのは、要綱の最後に載っている「特に女性に配慮して、美容効果の高い運動にするように」という一文です。敗戦当時、子どもを産む女性が大事にされていたからなんでしょうね。左右均等で、呼吸の要素も入り、あらゆる関節を美しい方向で動かす。体操の基本がすべて盛り込まれ、体が整います」

 当時はストレッチやコアという言葉はなかったが、すでにそれらの要素も盛り込まれている。大人のラジオ体操では、その点を意識できるような工夫を凝らした。

 「例えば、3回前屈して体を起こし、後ろに反る動きの時、前屈は全部同じではなく、徐々に深くしていきます。これこそダイナミックストレッチの理論、つまり、やればやるほど柔軟性が高くなり、可動域が広がっていく。そういうことを知ると、なるほどとなって、納得するじゃないですか」

 考案者の意図を、スポーツドクターの立場から分析し、一般向けに分かりやすく解説したことで、幅広い人たちに受け入れられた。「大人のラジオ体操」は累計83万部に達し、現在も重版が続いている。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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◇中村格子氏プロフィルなど


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