一流に学ぶ 「美と健康」説くスポーツドクター―中村格子氏
(第8回)
「大人のラジオ体操」がブレーク
震災支援で浮かんだアイデア
◇動きの意味、現代風に分かりやすく
「大人のラジオ体操」でも、体操自体はごく普通のラジオ体操と何も変わらない。それが、なぜここまでヒットしたのだろうか。
「一言でいえば、運動指導のポイントが今までと違うからだと思います。『こうしなくてはならない』という教え方ではなく、一つ一つの動きの意味を知って、これにはこういう効果があるから、こうした方が得なんだよ、と教えると、モチベーションが変わるんですよね」
あえて「大人の」ラジオ体操としたのには理由がある。
子ども時代にやっているだけに、大人は誰でも取っつきやすいし、改めて体操の意味が分かると、取り組みやすくもなる。
「戦後、ラジオ体操第一は老若男女、誰にもできることを基本につくられました。当時の国の策定要綱で、私が一番好きなのは、要綱の最後に載っている「特に女性に配慮して、美容効果の高い運動にするように」という一文です。敗戦当時、子どもを産む女性が大事にされていたからなんでしょうね。左右均等で、呼吸の要素も入り、あらゆる関節を美しい方向で動かす。体操の基本がすべて盛り込まれ、体が整います」
当時はストレッチやコアという言葉はなかったが、すでにそれらの要素も盛り込まれている。大人のラジオ体操では、その点を意識できるような工夫を凝らした。
「例えば、3回前屈して体を起こし、後ろに反る動きの時、前屈は全部同じではなく、徐々に深くしていきます。これこそダイナミックストレッチの理論、つまり、やればやるほど柔軟性が高くなり、可動域が広がっていく。そういうことを知ると、なるほどとなって、納得するじゃないですか」
考案者の意図を、スポーツドクターの立場から分析し、一般向けに分かりやすく解説したことで、幅広い人たちに受け入れられた。「大人のラジオ体操」は累計83万部に達し、現在も重版が続いている。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/08/30 11:01)