こちら診察室 医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ

ただそばにいるだけで、力に
~ファシリティドッグと過ごした子どもたち~ 【第10回(最終回)】

3回目の入院時にマサと過ごした宇都宮さん。「気持ちが全然違った」と振り返る

3回目の入院時にマサと過ごした宇都宮さん。「気持ちが全然違った」と振り返る

 ◇何も言わない優しさ

 ―医師や看護師のようにいろいろ話してくれるのではなく、ただ隣にいるだけのアイビーやマサは、3人にとってどんな存在ですか?

 永山 入院中は、本当は不満だらけだった。お母さんに「頑張ってね」って言われてしまうと、つい「もう頑張れないよ」と思っちゃいました。でも、アイビーに愚痴を言うと、絶対に寄り添ってくれる。否定しない。「何も言わない優しさ」っていうのかな。心強かったです。

 ―人間じゃだめなのかな。犬じゃなきゃだめなのかな?

 宇都宮 病気になったことがないと、本当の気持ちはわからないのかもな。犬とは言葉が通じないから、そのまま寄り添ってくれるというか。自分の気持ちをインプットして話し掛けてくれていた気がした。

動物が大好きな星さん。「マサと権守さんと出会って、私もハンドラーになりたいと思った」と将来の夢を語る

動物が大好きな星さん。「マサと権守さんと出会って、私もハンドラーになりたいと思った」と将来の夢を語る

 星 犬だけじゃなく動物が好きだから、「動物が見守ってくれている」というだけで、うれしいな。おやつあげたり、「よしよし」ってなでたり、そういうことが動物とはできるのがいい。

 永山 お医者さんたちは治療のことを知った上で話し掛けてくれる。治療される側とは、考えや気持ちに差があるかもしれません。知っているから「何か」を言ってしまう。その言葉は励ましのつもりで言ったかもしれないけど、それを聞いて私たちは傷ついちゃうこともあった。でも、犬は知らないままそばにいて、知らないからこそ支える力がある。ファシリティドッグは絶対(病院に)いるべきだと思います。


アイビー、マサとの時間について、真剣に語り合う三人

アイビー、マサとの時間について、真剣に語り合う三人

 ―みんなの話を聞いていると、ファシリティドッグには何か特別な力があるのかな? と思いました。

 宇都宮 「早く元気になれよ。落ち込んでいる暇はないよ」と言われている気はしていました。中学1年生の時に入院期間が長くて、勉強にやる気が起きなかったんだけど、マサに会うことで気持ちに変化が出たな。アドレナリンが出たというか。「ちょっと勉強やるか。暇なんだし」って。マサは(気持ちを)引き上げてくれる存在。

 星 マサと一緒にお習字や計算をやって、かわいいだけじゃなく「すごいな」という気持ちにもなった。かしこいから、安心感をもらえたのかな。

 ◇会えない時間にも、力になる存在

「ジャンプ!」の指示に的確に反応するマサ

「ジャンプ!」の指示に的確に反応するマサ

 永山 アイビーに会う時間ではないのに「支えられている」と感じることがありました。入院初期のころ、4人病室で私以外の3人は仲良しの小学生で。一人だけ年上で、会話に入れなかった時、3人が「アイビーがこの前こんなことしてくれたんだよ」と、アイビーの話を始めたんです。そこで、ちょっと勇気を出して私から「そうだよね、アイビーってさ」と話し掛けたら「そうそう!」「そうなんだよね!」と返してくれた。アイビーがその場にいなくても、アイビーの存在があったおかげで病室の子たちと仲良くなれた。本当に支えになってくれたんです。


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