こちら診察室 コロナ禍のスキンケア=手洗い、マスクによる肌のトラブル対策
手指の消毒はなぜ必要?
~コロナウイルス対策の基本(野村有子・野村皮膚科医院院長)~ 第3回
新型コロナウイルス感染症の感染拡大と、それに伴う外出の規制が始まった頃から、公共施設や医療機関はもちろん、店舗やオフィスでも入り口にアルコール消毒液が置かれ、出入りのたびに手指の消毒を求められることが不思議でも何でもなくなりました。
確かに消毒効果はあるのですが、繰り返していくうちに手が荒れてしまったり、消毒のたびに染みたりする人も出てきています。適切な消毒とスキンケアが必要になっています。
オフィスに入る際はアルコールで消毒
◇大切な皮膚表面のウイルス対策
新型コロナウイルスは皮膚の表面で約9時間生存し、インフルエンザウイルスの5倍ほどの長さに及ぶことが、京都府立医科大学の研究チームから報告されています。従って、飛沫(ひまつ)などの形で飛散して皮膚の表面に付着したウイルスへの対策は、感染症予防の基本となります。
感染経路では飛沫を直接吸い込む以外では、飛沫が付着した物を手で触ることにより、手の表面に付着したウイルスから感染する可能性もあります。手や指の消毒と手洗いが重要になるのはこのためです。
もう一つ大切な点は、ウイルスが付着している可能性がある手で、顔を触らないことです。特に目や鼻、口の粘膜にウイルスが付着することで、感染リスクが高まるからです。このほか、ウイルスが付着している可能性が高いマスク表面を、手で触ることも絶対にしてはなりません。木綿の布上では、新型コロナウイルスは室温30度で3日間も生存すると言われているからです。マスクを外すときは両側のゴムをつかむようにしましょう。
◇アルコール消毒とせっけんの効果
では、手からウイルスを取り除くにはどうすればよいでしょうか。80%のエタノール消毒液に15秒間さらすことによって、皮膚表面に付着した新型コロナウイルスが完全に不活化したと、京都府立医科大学の研究チームは報告しています。また、純せっけん(脂肪酸カリウム)では、せっけんの濃度が0.24%以上なら、物品に対する消毒・除菌の有効性があることが、経済産業省と独立行政法人製品評価技術基盤機構より報告されています。
この0.24%とは非常に薄い濃度で、通常の固形せっけんは、ほぼ100%、液体タイプは23%くらいありますので、せっけんで手洗いをして洗い流すことでウイルス除去には十分効果が得られると考えられます。つまり、アルコール消毒とせっけんの手洗い自体は、正しく行えばどちらも有効ということです。
◇アルコール消毒とせっけんの使い分け
結論から言えば、アルコール消毒は外出先など、せっけんで手を洗えないときに使用する。せっけんで手を洗えるときは、せっけんで洗う方が望ましい、ということになります。両方を同時に行う必要はありません。むしろ皮膚のバリアー機能が破壊されて手が荒れてしまうので注意が必要となります。
アルコール消毒液による手指消毒は、店舗など不特定多数の人が集まる場所に入る際に使用されることが一般的です。これは、屋内にウイルスを持ち込まないようにするためです。屋内で何か物を触った場合は、出るときにもう一度アルコール消毒をしましょう。自分の手に付着したかもしれないウイルスを殺菌するためです。
アルコール消毒液を使う場合は、まず物に触る手のひらや指先によく塗り込みます。逆に物が触れない手の甲や指の間、手首はそれほど意識しなくてもよいでしょう。特に手の甲や指の間、手首は肌荒れがしやすい部分なので注意が必要です。
手が荒れていてアルコールが染みてしまう場合やアルコールにアレルギーがある場合には、透明のビニール手袋を着用し、その上からアルコール消毒をしましょう。店を出たタイミングでビニール手袋を外して、ポリ袋などに入れて処分します。外す際には、手袋の表面を素手で触らないように気を付けてください。
◇せっけんで洗う場合の注意
正しい手の洗い方
まず、手全体をぬるま湯でぬらした後に、よく泡立てたせっけんで手全体を優しく包み込むように洗いましょう。爪の周りや指の間、手首も忘れないように。皮膚を傷つけないように、手と手をゴシゴシ強くこすり付けないようにしてください。その後、泡が残らないように、ぬるま湯で優しくすすぐことを忘れないようにしましょう。
洗った後は、すぐに乾いた清潔な柔らかいタオルで手全体を優しく包み込むように、水分をきちんと拭き取ります。汚れたタオルを使用したり、ハンカチを他人と共有したりすることを避けることも大切です。
手洗いが多かったり、手荒れに悩んだりする人は、通常は敏感肌用の固形せっけん、もしくは泡タイプのハンドソープを使用する。殺菌作用のあるせっけんは帰宅時など汚れが強いときにだけ使用するなど、使い分けをするとよいでしょう。
正しい手指消毒と手洗い、そして、小まめなハンドケアによって、手荒れは防ぐことができます。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの感染リスクを減らすためにも、きれいな手をキープできるようにしたいですね。(了)
野村有子院長
野村有子(のむら・ゆうこ)
1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。
第2回「悪化すると日常生活に支障~手荒れの段階の具体的イメージ」
第1回「コロナ予防で増える手荒れ~冬に向かい、加速度的に悪化」
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