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コロナ予防で増える手荒れ
~冬に向かい、加速度的に悪化(野村有子・野村皮膚科医院院長)~ 第1回

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、感染の入り口になる手指の消毒と手洗いが必須の時代となりました。しかし、同時に「手荒れ」も増えているのです。手が荒れてあかぎれや傷ができている状態では、細菌やウイルスが傷口から入り込みやすくなります。さらに、秋から冬に向かって乾燥や冷えが加わると、手荒れは加速度的に悪化してしまいます。正しい手洗いとハンドケアは、感染症対策の上でとても大切です。

正常な手の状態

 ◇10項目の手荒れチェック

 最初に自分の皮膚の状態や日常生活をチェックします。

 ○冬になると体や、すねが乾燥しやすくなりませんか。

 ○せっけんやシャンプー、ローション、クリームを使うと、染みたり、かゆくなったりすることはないですか。

 ○日常の家事作業で、食器洗いなどの水仕事を素手ですることが多くはありませんか。

 ○パソコンや携帯を使うことが多くありませんか。

 ○汚れが気になって、すぐ手を洗いたくなりませんか。

 ○紙やビニールがめくりにくいことはありませんか。

 ○指先がかさついたり、ささくれができたりすることがありませんか。

 ○指先や指の関節部分が割れて、血がにじむことがありませんか。

 ○手や指に赤くジクジクしている部分がありませんか。

 ○手や指がかゆくて、無意識にかいてしまうことがありませんか。

 これらの項目について、少しでも当てはまるものをチェックしてみてください。数が多くてショックを受ける人も多いと思います。

 ◇手荒れとは何か

 現在、手荒れは非常にありふれた「病気」になっているのです。そもそも手荒れとは何でしょうか。医学的な手荒れの定義は、手湿疹や亀裂性湿疹、進行性指掌角皮症(しんこうせいししょうかくひしょう)とも言われています。

 具体的には、手のひらや甲、指先がかさついたり、皮がむけたり、亀裂が生じたりする。ひどくなるとジクジクして腫れてきたり、水ぶくれができたりして、手で物を持つことすら不自由になってしまう、という病気です。また、かゆくて夜も眠れなくなったりすることがあります。

 手が荒れてしまうと生活に支障が生じるだけではありません。日常生活では、目に見える部分に手荒れがあることで、他人の目が気になったり、自分でもストレスを感じたり、その影響はかなりのものだと言えるでしょう。

 ◇手荒れが起こるメカニズム

 まず手の解剖学的特徴について見てみましょう。皮膚表面の表皮は約1カ月かけて生まれ変わり、古い表皮は角質、いわゆる「アカ」となって、2週間ほどで自然にむけてなくなっていきます。角層は10層ありますが、手のひらはその数倍の厚さがあります。

 通常はこの角層が正常に保たれることで、外部の刺激や異物から皮膚を守るバリアー機能が維持され、外的刺激から守る仕組みになっています。特に手のひらは角層が厚いためバリアー機能が高く、外的刺激に対して他の部分の皮膚よりも強い、と言えます。さらに手のひらは、汗を出すエクリン汗腺が体の中でも最も多い部分なのです。なぜなら手のひらの汗の湿り気を保たせて滑らないで物をつかみやすい仕組みになっているからです。

 この汗の中には、皮膚表面の酸性を維持するための乳酸、保湿成分の尿素、抗菌ペプチドなどが含まれており、皮膚表面を健やかに保つ働きを担っています。このように手のひらは、機能的に優れた皮膚の構造を持っているのです。

手が荒れ始めた状態


 ◇手荒れはなぜ起きるのか

 どうして手荒れが起きてしまうのでしょうか。なぜなら、手は体の中でも最も外部環境との接触頻度が高い、すなわち外的刺激を最も多く受けやすい部位だからです。その上、手洗いや手の使い方、体質などによっても手荒れは生じやすくなることがあります。

 最初にチェックしてもらった手荒れのセルフチェックを見直してください。最初の2項目は「肌体質チェック」です。肌が乾燥しやすかったり、スキンケア製品でかゆくなりやすかったり敏感だったりすると、手荒れは生じやすくなります。

 3番目から5番目までの項目は「生活習慣チェック」です。繰り返し水仕事をしたり、手を洗ったりすることで、皮膚表面の皮脂は溶け出して皮膚のバリアー機能は低下してしまいます。また布や紙など水分を吸い取るものを頻回に触ることでも、角層の水分量は低下していきます。パソコンやスマートフォンなどの作業も、熱と乾燥により角質の水分を奪ってしまいます。

 6番目から10番目までは、「手荒れ度」のチェックです。このうち最初の二つは手荒れの初期の段階で、乾燥症状が主で、この段階であれば保湿クリームなどを使うなどのハンドケアをすれば症状はすぐに改善します。

 一方、8番目は「手荒れが進行しつつある段階」と言え、こうなると手袋などにより手を保護して、適切な保湿ケアも必要となります。最後の二つは手荒れが悪化して重症化した段階で、皮膚科を受診して治療を受けることが必要になります。(了)

野村有子院長


 野村有子(のむら・ゆうこ)
 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。

第2回「悪化すると日常生活に支障~手荒れの段階の具体的イメージ」

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