治療・予防

その飛蚊症、本当に年のせい?
網膜裂孔の可能性も(おおしま眼科クリニック 大島佑介院長)

 物を見ている時、小さな虫や糸くずのようなものが視界を流れる飛蚊(ひぶん)症という目の症状がある。ほとんどが加齢による生理的変化で心配はないが、網膜に穴が開く網膜裂孔の初期の場合がある。おおしま眼科クリニック(大阪府高槻市)の大島佑介院長は「いつもより飛蚊症の症状により視界が気になるようなら注意が必要です」と早めの受診を促す。

飛蚊症の症状が以前より気になったら眼科へ

飛蚊症の症状が以前より気になったら眼科へ

 ▽網膜裂孔の初期にも

 中高年の網膜裂孔は、主に加齢による硝子体(しょうしたい)の変化が原因で起こる。眼球の内部は硝子体というゼリー状の組織で満たされ、網膜は硝子体と接している。硝子体は、50歳ごろから液状に変化してしぼみ、網膜との間に隙間ができる後部硝子体剥離という現象が起きる。

 「後部硝子体剥離は病気ではありませんが、硝子体が網膜と強く癒着していると、硝子体に引っ張られた網膜は引き裂かれます。このとき網膜に穴が開くのが網膜裂孔です」と大島院長。近視が強い人に多く見られ、若年でも、強度の近視や目の外傷が原因となって起こることがある。

 網膜裂孔の初期には飛蚊症が表れる。飛蚊症は、青空や白壁など背景が明るい所を見るときに表れやすいが、網膜裂孔による飛蚊症はやや暗いところでも自覚するようになり、視界に閃光(せんこう)のようなものが見えることもある(光視症)。病状が進むと、視野の一部が煙がかかったように見えにくくなり、やがて視野欠損や視力低下が生じる網膜剥離まで進行する危険が高くなる。

 ▽異変感じたらすぐ受診

 網膜裂孔の治療では、裂孔の周囲の網膜をレーザー光線の熱で凝固させる網膜光凝固術により網膜剥離への進行を防ぐ。それでも、飛蚊症はしばらく続く。

 網膜裂孔を放置すると、開いた穴から硝子体が液化した水分が入り込み、10層から成る網膜のうち感覚網膜という光を感じる9層が、その土台となる網膜色素上皮という層から剥がれる網膜剥離に進行することがある。網膜剥離に至ると、ほとんどが失明防止のために手術を受ける。症状がひどい場合、手術しても視力が回復しない、物がゆがんで見えるなどの後遺症を残すことがあるので、網膜裂孔の段階で治療して後遺症を防ぐことが重要だ。

 特に中高年や強度近視では、硝子体の液化が進んでいることが多いので、網膜裂孔から剥離まで短時間のうちに進行。症状が表れて数時間で重症化するケースもあり、早めに治療する必要がある。

 「飛蚊症を自覚している人で、普段よりも症状が気になる、いつもと表れ方が違うといったことがあれば、網膜裂孔の可能性が高いので、ためらわずに眼科を受診してください」と大島院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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