脊髄外傷〔せきずいがいしょう〕 家庭の医学

[原因]
 頭部外傷の場合と同様ですが、場所が脊髄である点を注意してください。

[症状]
 脊髄外傷でも、腫瘍の場合と同様に、その障害の部位(高さ)、大きさなどによって重症度や症状はさまざまです。原因についても頭部外傷と同じように多種で、脊椎・髄膜・脊髄自体といった部位差や、開放性損傷、骨折、出血など性質の差も、症状・経過に関係してきます。
 脊椎の骨折やずれが起きた場合はその部分に激痛が起こります。しかし実際にはX線検査による所見が決め手になります。脊髄自体に損傷が起これば、その高さ以下のまひ、感覚の障害、排尿排便障害などが起こります。

[診断]
 脊髄外傷も脳の場合と同様に、外傷時のようす、症状・経過が重要です。X線単純撮影、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)、筋電図検査などが状況により併用されます。

[治療]
 外傷を受けた場所から病院などへ移送するときは、損傷部および脊椎全体を動かさないように、頭とからだとを1本の棒のようにして平面上のもの(板やたんか)に乗せ、静かに運ぶことが大切です。特に頸椎をしっかり固定します。その際、呼吸障害やショック治療など、人工呼吸や医師による治療が必要な場合があります。
 自然の経過で回復をまつ間に、脊髄が浮腫を起こしたり、出血して血腫ができたりして脊髄が圧迫された場合には、腫瘍の手術と同様に、後方から脊椎の一部(椎弓〈ついきゅう〉)を切除して圧を下げる必要があります。脊髄外傷は後遺症を残すことが多く、その場合はいわゆる“脊損”(脊髄損傷)のリハビリテーションを、根気よく続けることが大切です。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)