慢性リンパ節炎〔まんせいりんぱせつえん〕 家庭の医学

 この病気は結核性リンパ節炎(リンパ節結核、るいれき)と、慢性単純性リンパ節炎に分かれます。
 結核は以前にくらべるとかなり減りましたが、1997年にはこれまで減少を続けてきた新規発生結核患者数が38年ぶりに増加し、99年には厚生省(現厚生労働省)が結核緊急事態宣言を発表しました。2002年には3万2828人の新規結核患者が発生し、2316人が結核で亡くなるという、いまでも軽視できない感染症です。しかしその後は、新規患者の発生数は減少してきています。なお、2021年の新登録結核患者数は1万1519人で、80~89歳が29.9%ともっとも多くなっています。
 一般に結核というと肺結核を連想しますが、リンパ節も結核にかかりやすい部位です。特にくびのリンパ節はよく発症する部位で、口の中や咽頭(いんとう)の粘膜、肺の病巣(びょうそう)から結核菌が侵入すると考えられています。青年期に多く、初期は1~数個のリンパ節がはれ、痛みはあっても軽度です。経過とともに炎症を起こし、リンパ節どうしが固まったり、周囲の組織と癒着したりします。さらに化膿して、皮下にうみがたまることもあります。治療は抗結核薬の服用ですが、最近は薬剤に抵抗性のある結核菌がふえています。
 慢性単純性リンパ節炎は、多くの場合、急性リンパ節炎が治癒しないまま長引いたものです。治療としては、原因病原菌に対する抗菌薬の服用が一般的です。

(執筆・監修:埼玉医科大学 名誉教授 中塚 貴志)
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