[肝臓の構造とはたらき] 家庭の医学

■構造
 肝臓は横隔膜のすぐ下、胃の右にある大きな、比較的やわらかい臓器で、成人の重さは1200~1500gです。肝臓には肝動脈と門脈の血液が流入します。ほかの臓器は酸素の多い動脈血がそそぐだけです。しかし、肝臓には動脈のほかに、食道の下部、胃、十二指腸、小腸、結腸、膵(すい)臓、脾(ひ)臓、胆嚢(たんのう)の静脈血が集まった門脈血がそそぎます。このため消化管で吸収された栄養分は、肝臓に送られて処理されます。肝臓からの血液は、左、中、右肝静脈を経て下大静脈にそそぎます。肝臓は中肝静脈によって右肝と左肝に分かれていますが、右肝のほうが大きいのがふつうです。
 肝臓から分泌される胆汁を十二指腸に送る管が胆管です。胆管の右側に胆汁をためる袋がついています。これが胆嚢です。肝臓のなかの胆管で、集まって1本になるまでの部分を肝内胆管、その下流で胆嚢が開口しているまでの部分を肝管、胆嚢が開いているところから十二指腸への開口部までを総胆管といいます。また、これらを総称して胆道といいます。


■はたらき
 肝臓には消化管から吸収された栄養物が門脈を介して入ってきます。これを肝臓の細胞(肝細胞)が利用して、からだに必要なさまざまな物質をつくります(合成能)。また、からだで不要になった物質や、投与された薬などを処理して、胆汁中に排泄したり、腎臓から尿中に排泄できる構造に変化させたりします。このように、いろいろなはたらきがあり、生命を保つうえで非常に重要な臓器です。
 大事なことを「カンジン」といいますが、カンは肝臓の肝、ジンは心臓の心、あるいは腎臓の腎と書くくらい大切な臓器です。
 肝臓のはたらきをまとめると、次のようになります。

1. 食事に含まれる糖質、脂質、たんぱく質は、消化管で消化されて栄養分になりますが、これを利用してアルブミン、血液凝固因子、コレステロールなど、からだに必要なさまざまな物質をつくり、血液中に放出します。また、胆汁酸をつくり、これを胆汁中に分泌します。
2. 消化管から吸収された栄養分のうち、余った糖質はグリコーゲンとして肝臓の細胞の中に蓄えます。ビタミンA、ビタミンB12など、からだのはたらきに必要なビタミンも肝臓に蓄えています。
3. 薬など外界から入ってきた異物や、からだの中でつくられ不要になった物質を解毒、処理して、胆汁中に排泄したり、血中に戻して腎臓から尿中に排泄できるようにしたりします。古くなった赤血球は脾臓でこわされますが、赤血球の中にあるヘモグロビンという色素は、からだで不要になったものの代表です。脾臓でヘモグロビンはビリルビンという色素につくり替えられますが、ビリルビンは肝臓の細胞で処理されて、胆汁中に排泄されます。大便が黄色であるのは、ビリルビンの色によるものです。
4. 肝臓がつくる胆汁には、ビリルビン、胆汁酸とともにコレステロールが含まれており、脂質の消化や、ビタミンK、ビタミンDなど脂肪に溶けるビタミンの吸収に際して、重要な役割を果たしています。また、胆汁はアルカリ性で、膵臓から分泌される消化酵素がはたらけるようにします。胆汁酸には大腸のはたらきを強める作用もあります。

 このようにまとめると、わたしたち人間にとって、肝臓がいかに重要な臓器であるかがわかると思います。