副甲状腺機能低下症〔ふくこうじょうせんきのうていかしょう〕 家庭の医学

 副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が低下して低カルシウム血症をきたす病気です。特発性と続発性があります。特発性は多くが免疫の異常によって副甲状腺が破壊されて起こると考えられます。まれですが、副腎など他の内分泌腺機能の低下を合併することがあります。
 続発性とは、頸部(けいぶ)手術で副甲状腺を摘出したり、頸部の放射線治療で副甲状腺が障害されて起こる機能低下症です。ほとんどの症状は低カルシウム血症によるもので、テタニー(痛みを伴う筋肉のけいれんで、上肢でよくみられる)が代表的です。「産科医の手」と呼ばれる特徴的な手のけいれんがみられます。てんかん様のけいれんを起こすこともあります。手指や口唇のしびれ感などの異常感覚もよくみられる症状です。けいれんをくり返す人では、知能の低下を示すことがあります。
 皮膚は乾燥し、頭髪はまばらになり、また爪や皮膚にモニリア症(カビの感染)を合併することがあります。また、約半数に白内障がみられ、歯のエナメル質の欠損も特徴です。
 なお、PTH分泌が障害されていないのに副甲状腺機能低下症と同様に血液中のカルシウム濃度が低く、リン濃度が高くなる病気があります。これは、PTHに対して腎臓が先天的に反応しない病気で、低身長、丸顔、知能障害、中手指骨の短縮など特徴的な身体所見があり、「偽性副甲状腺機能低下症」と呼ばれるまれな先天性の病気です。

[診断]
 血液中のカルシウム濃度が低く、かつPTH濃度が低いことで診断できます。腎臓からのリン排泄(はいせつ)が低下するため血中リン濃度は高くなり、また血中ビタミンDは低下します。頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査で、時に大脳基底核に石灰化をみることがあります。てんかんなどとの鑑別が必要です。

[治療]
 ビタミンD製剤とカルシウム製剤を使用して血中カルシウム濃度を一定以上に保つようにします。テタニー発作などを起こした場合には、注射でカルシウム製剤をただちに注入する必要があります。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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