電磁波(非電離放射線)による健康被害 家庭の医学

 送電線の近隣に住んでいると白血病になるとか、携帯電話により耳の神経の腫瘍がふえたなど、電磁波の健康への影響を懸念する報告があります。しかし、わたしたちの通常の生活で使用する範囲の電磁波(電場と磁場)で、実際に健康被害があったと確証する論文はありません。
 電磁波により動悸(どうき)、不安感、頭痛、湿疹など、さまざまな不定愁訴(しゅうそ)をうったえる電磁波過敏症という病名も聞かれます。これは女性に多く、症状も化学物質過敏症と同様のことが多く、両者の合併例も多いようです。
 しかし電磁波は、その周波数によりさまざまな性質をもち、また、人は屋外の送電線より、屋内の電気毛布や枕元の電気時計からはるかに強い電磁波を浴びています。しかし、そういうことをきちんと考慮した研究がまだありません。また、コンピュータからの電磁波を防ぐといわれるOAエプロンは、その有効性を示す根拠はなく、いまはほとんどかえりみられなくなりました。

(執筆・監修:帝京大学 名誉教授〔公衆衛生学〕 矢野 栄二)
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