振動の影響 家庭の医学

 チェーンソーなどの振動工具を使った作業をおこない、からだの局所が強い振動を受け続けると末梢の血液循環が障害され、白ろう病と呼ばれる職業病になります。特に冬期、寒冷刺激で手の血管が収縮して血の気が失せて白くなり、慢性化すると皮膚がろうのようになるため、この名前がつけられました(参照:レイノー症候群)。
 いっぽう、ふつうの人が振動を受けるのは全身の場合が多く、車や船などの乗り物による場合と、道路際や工場近隣の住居などの場合があります。乗り物の振動ではいわゆる乗り物酔いとなり、吐き気、嘔吐(おうと)をひき起こしますが、気分的な影響も大きく、また睡眠不足は発症の引き金となります。住居での振動は不眠、頭痛など、ストレスによる心理的影響が主となり、今日の都市公害の一つです。
 また、音としては聞こえないレベルの空気振動も、都市公害として注目されています。頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなどの生理的変調や、イライラ、集中力阻害、不眠などの心理的うったえが、実は離れたところにある工場から伝わる低周波空気振動のためであったということがあります。

(執筆・監修:帝京大学 名誉教授〔公衆衛生学〕 矢野 栄二)
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