心電図検査

 心臓は筋肉(心筋)の塊であり、たえず収縮・拡張をくり返してポンプとしてはたらき、全身に血液を送り出しています。心筋は、洞房結節という特定の部分で発生した電気信号により収縮しますが、心臓には、これを伝えるための刺激伝導系という特別な神経細胞の経路が存在します。この電気信号が心筋全体に伝わって収縮する際、心筋に生じる大きな電気信号を測定して記録するのが心電図検査です。
 検査はベッドに仰向けに寝て安静の状態でおこないます。コーヒーやたばこなどの刺激物は検査の1時間前からは口にしないようにします。
 心電図では図に示したような波形がくり返し描かれます。このうちP波は心房の収縮を、QRST部分は心室の収縮と弛緩(しかん)を示しています。このP-QRS-Tの波形を、両手くび、両足くび、胸部(6カ所)に電極をつけて記録します。

 通常は、四肢の電極から得られる6誘導(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVR、aVL、aVF)と、胸部の電極から得られる6誘導(V1~V6)の、計12誘導の波形を記録して評価します。
 正常では、P-QRS-Tの波形が規則的にくり返され、その間隔はほぼ一定ですが、呼気時にすこし長くなり(脈はすこしおそくなる)、吸気時にすこし短くなる(脈はすこし速くなる)こともよく観察されます。これは呼吸性不整脈という正常の生理的な変化です。
 不整脈の場合には、あるP-QRS-T波形の次の波形が早くにみられたり(心房性期外収縮)、変形したQRS-T波形が不規則に入り込んだり(心室性期外収縮)、本来ならみられるはずの波形が抜けたりします。心房細動と呼ばれる状態では、P波がみられなくなって、かわりに不規則な細動波(f波)による基線のこまかなゆれがみられるようになり、QRS-Tの波形も不規則に出現するようになります。
 心室性期外収縮が数多くみられるときにはくわしく検査する必要があります。悪化し心室細動を起こすと心臓のポンプ作用が失われ、心臓が止まってしまうからです。心筋梗塞を起こすと、この心室細動を起こしやすくなります。
 心臓が肥大(心室の壁が厚くなった状態)すると、R波やS波の振幅が大きくなり、心筋虚血(心室壁の酸素不足)ではSTの部分が低下します。心筋梗塞を起こすと、ST部分が上昇したり、深いQ波がみられたりします。
 安静時の心電図では変化がみられない場合(狭心症など)、速歩きなど、運動の負荷を加えながら心電図をとります(トレッドミル負荷試験)。このとき、狭心症の発作を起こすこともあるので十分に注意することが必要です。
 また、ふつうの生活しながら、24時間心電図を記録して解析するホルター心電図という検査もあり、発作性の不整脈や狭心症の診断に有効です。

【参照】医療機器による検査:心電図検査

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)

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