腹部・体表超音波検査 家庭の医学

 超音波(エコー)検査では、肝臓や胆嚢(たんのう)、膵(すい)臓、腎臓、子宮、膀胱(ぼうこう)などの体内深部の臓器や、乳腺、甲状腺、各所の血管などの体表近くの臓器が観察できます。検査装置の性能は年々向上しており、画質がよい装置だけでなく、「聴診器代わりに」使える小型の装置も一般的になりつつあります。このため超音波検査は、検査室にとどまらず、外来、病棟、手術室、往診先や検診など、さまざまな場面でおこなわれています。近年では、対象と目的を絞って短時間でおこなうpoint-of-care超音波検査(POCUS)も、さかんに活用されるようになりました。
 腹部臓器の代表である肝臓では、肝細胞がん、各種のがんの転移、肝嚢胞(のうほう:液のたまった袋)、肝血管腫などの局所的な病変に加え、脂肪肝肝硬変などの臓器全体に及ぶ病変の評価もおこなえます。組織の血流を観察できる超音波ドプラ法のほか、微小な気泡を造影剤として利用する造影超音波法、組織のかたさを評価する超音波エラストグラフィ、超音波の組織中での減衰を評価する超音波減衰表示など、最新の手法も併用すれば、さまざまな病態をより詳細に解析できます。
 また、乳がんの検診では、乳腺撮影(マンモグラフィ)とあわせ、小さな乳がんの存在を確認できる乳腺超音波は重要な手法として位置づけられています。特に、乳腺の発達した閉経前の女性や、ホルモン補充療法中の閉経後の女性のマンモグラフィでは、乳腺の陰影が詳細な読影を困難にすることがあり、超音波検査の役割は特に大きくなります。

【参照】医療機器による検査:超音波検査(エコー検査)

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)