治療・予防

三つに大別される失神
~「心臓に原因」は要注意(大阪警察病院 南口仁副部長)~

 脳の一時的な血流低下で意識を失う失神は、年間約80万人に発生するとされる。全国でも珍しい「失神外来」を担当する大阪警察病院(大阪市)循環器内科の南口仁副部長は「原因はさまざまですが、不整脈など心臓の病気の場合は注意が必要です」と指摘する。

くしゃみによる失神

くしゃみによる失神

 ◇自律神経の原因が6割

 失神は▽自律神経のバランスの乱れで血圧が急に低下する「反射性失神」▽立ち上がったときに血流が下半身に集中し脳で減る「起立性低血圧」による失神▽心臓の障害に由来する「心原性失神」―の三つに大別される。失神患者全体のうち反射性の割合は60%と最も多く、起立性低血圧と心原性はそれぞれ15%。

 一般的には、反射性失神は感情の高ぶり、痛み・恐怖などがきっかけとなる。起立性低血圧による失神は、高齢者で脱水を機に起きることがある。これらのタイプは、転倒や事故を除けば、その後の健康状態に大きな心配はないが、心原性失神は元の心臓病の影響が懸念される。

 「失神は数分以内に治まるので、救急外来受診時には回復しています。ただし、その後の治療方針が決まらないことが多いです」と南口副部長。そこで大阪警察病院では、回復した患者を改めて診察する失神外来を設けている。「原因を見つけて適切な診療につなげること、治療の必要が特にない患者に安心してもらうことが目的です」

 ◇失神した状況を詳しく

 同外来では歩行中、頭を打ったとき、排便・排尿中といった発症時の状況を詳しく問診する。失神前に気分が悪くなったか、動悸(どうき)がしたかなども尋ねる。

 血液検査、心臓の超音波検査、通常の心電図検査、胸にパッチを貼り付けて24時間記録する心電図検査なども行う。「原因が分からない再発性の失神患者では、胸の皮膚の直下に電極を植え込むタイプの心電図検査で、日常生活中の心臓の異常を見つけます」。心臓病があれば、循環器内科で診療を継続する。

 失神を防ぐ基本的な対策としては、規則正しい生活を送り、ストレスや睡眠不足、脱水を避けること、適度な運動を指導している。自分が失神しそうだと感じたら、しゃがんで転倒を防ぐことも大切という。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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