老化の理解 家庭の医学

解説
 老化とは、成熟後に(1)誰にでも起こり、(2)遺伝的にプログラムされ、(3)後戻りできず、(4)生命維持には不都合な現象とされており(老化の4原則)、遺伝子と生活習慣によって進行速度が異なると考えられています。

 遺伝的にプログラムされているメカニズムの一つにテロメアの変化があります。テロメアとは遺伝情報がつまっている染色体の末端にあり、染色体を安定させ保護する役割を担っています。
 細胞は、がん細胞以外は細胞分裂回数に制限があり、これを発見者にちなんでヘイフリック(Hayflic)の限界といいます。この限界を規定している要素にテロメアがあります。遺伝子の複写にはテロメアが一定の長さあることが必要です。しかし、細胞分裂のたびにテロメアは少しずつ短くなり、一定の長さ以下になると細胞分裂ができず新たな細胞ができなくなります。これが細胞の老化です。これによって臓器や皮膚の老化が説明できます。

 老化進行を遅らせる遺伝子の候補にはサーチュイン遺伝子(Sir)があります。酸化ストレスから生体を守り、脂肪太りを防ぎ、睡眠の質を高め、血糖値上昇を防ぐなど多くの作用があります。長寿遺伝子は、運動やエネルギー制限で活性化することが知られており、生活習慣(病)が老化を促進するしくみの一部と考えられています。
 ところで、老化現象とはどんなものでしょうか。
 老化現象は、「減る」「乾く」「固くなる」のが特徴です。この三大特徴をまとめたのが次の表です。

●老化現象の三大特徴
減る腎機能、呼吸機能、脳重量、筋肉量、骨量
[例外]心重量、前立腺体積
乾く皮膚、口腔(こうくう)粘膜、眼球表面、毛髪
固くなる皮膚、関節、靭帯(じんたい)、動脈


 では、老化現象からみた寿命の制限はあるのでしょうか。
・1秒間に吐き出す息の量(1秒量)は130歳で0になります。
・年間100万本の視神経細胞の喪失から、136歳で視力は0になります。
・120歳で筋肉量は8割減になり起立不能になります。
・年齢100歳で9割が認知症になります。
 このように臓器からみた寿命があります。

(執筆・監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 理事長/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐 鳥羽 研二)