政府の花粉症対策を巡り、林業関係者から疑問の声が出ている。花粉を発生させるスギ人工林を10年間で2割程度減らし、約30年後に花粉の発生量を半減させる目標を打ち出したが、人手不足や木材需要の低迷など林業を取り巻く状況は依然厳しく、実現性が不透明だからだ。
 政府は昨年5月、新たな花粉症対策を決定。発生源対策として、スギ人工林の伐採面積を現在の年間約5万ヘクタールから約7万ヘクタールに増やし、2033年度までにスギ人工林を約2割減少させるとした。24年度から、都道府県が設定した重点区域で、伐採などに向けた所有者らとの協議が本格化する。
 ただ、林業従事者の減少に歯止めはかかっておらず、高齢化も進んでいる。林野庁は、高性能な機械の導入を支援するなどして人手不足に対応する考えだが、業界関係者は「傾斜がきつい場所もあるので、機械を使いこなす人材の育成も必要だ」と指摘。ある自治体関係者は、重点区域には小規模森林所有者も多いとして、「森林を集約して一体的に伐採したいが、合意を得るのはなかなか難しい」と打ち明ける。
 一方、有識者らによる任意団体「国民森林会議」は今年2月、提言書を公表。木材の需要が低迷する中、大量に伐採されたスギ材の製品が市場に出回れば、さらなる木材価格の低下を招く可能性があると懸念を示した。業界団体幹部は「林業全体が好転しないと2割減少の目標は達成できない」と訴える。
 林野庁は、住宅などに使う木材のスギ材への転換を促進するなどして需要を拡大する計画。同庁幹部は「花粉症予防をきっかけに、森林や林業が抱える課題に目を向けてもらい、国産材を使ってみようといった意識が広がってほしい」と話した。 (C)時事通信社