「幸せな家庭を奪われた」「良い判決を」。旧優生保護法に基づく強制不妊手術を巡る訴訟で、最高裁での意見陳述を終えた原告らは29日、口々に国への怒りや判決に対する期待を語った。
 「裁判官の顔を見ただけで動揺して、ずっと下を見て話していた」。原告の北三郎さん(仮名、81)は陳述後の記者会見で、緊張した表情で振り返った。それでも「伝わったかなという気持ちでいる。良い判決をもらいたい」と希望を込めた。
 野村太朗さん、花子さん夫妻(いずれも仮名)は「他の夫婦と同じように幸せな家庭を築きたかったが、その権利を奪われた」と憤る。時間が限られ十分に話せなかったとしつつ、「(他の)障害を持つ夫婦のためにも、きょうの裁判は頑張った」と手話で語った。
 裁判は長期化し、亡くなった原告もいる。北さんは「心が痛む。国は悪かったと一言くらい言ってほしい」と話し、野村さん夫妻は「年齢的に体が言うことを聞かない。早く裁判を終わらせてほしい」と願った。
 脳性まひを抱える神戸市の鈴木由美さん(68)は「裁判官は前のめりになって聞いてくれた」と法廷内の様子を回想。「何も言われないまま手術され、つらかった。どんな年月を過ごしてきたかを考えてまっとうな判断をしていただきたい」と訴えた。 (C)時事通信社