ビタミンやミネラルなど、さまざまなサプリメントや健康食品が日本や米国で大量に消費されているが、それらがもたらす健康ベネフィットを支持する確固たるエビデンスは乏しい。米・National Institutes of HealthのErikka Loftfield氏らは、大規模な前向き研究3件の長期追跡データを基に、マルチビタミン(以下、MV)摂取と死亡との関連を検討する観察研究を実施。「MVの摂取が寿命を延ばすというデータは得られなかった」とJAMA Netw Open(2024; 7: e2418729)に報告した(関連記事「サプリに心血管疾患・がんの初発予防の益なし」、「心血管疾患・がん予防サプリ、また推奨せず」)。

登録時に慢性疾患がない健康成人を抽出

 米国では主に疾患予防を目的に、成人の3人に1人はMVを摂取しているといわれている。しかし、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は2022年、ランダム化臨床試験のデータなどをレビューした結果、MVサプリメントのベネフィットや害について断言できる十分なエビデンスは見つからなかったと報告している

 今回Loftfield氏らは、登録時にがんやその他の慢性疾患既往歴がなく、ベースライン(1993~2001年)と追跡期間(1998~2004年)中のMV使用データが存在する成人患者を、National Institutes of Health-AARP Diet and Health Study(NIH-AARP)、Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial(PLO Cancer Screening Trial)、Agricultural Health Study(AHS)から抽出。Cox比例ハザードモデルで死亡のハザード比(HR)を求めた。

追跡期間の前半/後半いずれも死亡リスクの差なし

 解析に際し、MV使用のカテゴリーを統一するため、3コホートの参加者に対し、追跡期間中にMV使用に関する追加の質問を行い、非使用群(nonuser)、毎日でない使用群(nondaily user)、毎日使用群(daily user)に分類した(無回答あるいは既に死亡していた参加者は解析対象から除外)。

 解析対象となった参加者の合計は39万124例(NIH-AARP 32万7,732例、PLO Cancer Screening Trial 4万2,732例、AHS 1万9,660例)で、ベースラインの年齢中央値は61.5歳(四分位範囲56.7~66.0歳)、男性が55.4%(21万6,202例)だった。また、40.9%(15万9,692例)が喫煙未経験者、40.3%(15万7,319例)が大卒だった。

 毎日使用群と非使用群の比較では、女性割合が49.3% vs. 39.3%、大卒が42.0% vs. 37.9%、現喫煙者が11.0% vs. 13.0%だった。

 MV使用と全死亡リスクの低下には追跡期間の前半(多変量調整後のHR 1.04、95%CI 1.02~1.07)、後半(同 1.04、0.99~1.08)いずれにおいても関連を認めなかった。主な死因別解析や時変解析でも毎日使用群と非使用群のHRは同等だった

 以上の結果を踏まえLoftfield氏らは「慢性疾患既往歴を有さない総合的に健康な成人約39万例の本コホート研究において、MVの定期摂取による寿命の改善を支持するエビデンスは見つからなかった」と指摘。「観察研究ゆえの未測定の交絡因子や選択バイアスが存在する可能性、MVの使用に関する記憶違いによる分類間違いなどの研究の限界はあるものの、MV使用と死亡リスク低下ベネフィットとの関連は確認されなかった」と結論づけている。

木本 治