東京都大田区で2022年、メタノールを使って妻を中毒死させたとして、殺人罪に問われた製薬大手「第一三共」元社員、吉田佳右被告(42)の裁判員裁判の公判が11日、東京地裁(坂田威一郎裁判長)であった。検察側は懲役18年を求刑し、弁護側は改めて無罪を主張して結審した。判決は30日。
 検察側は論告で、研究員だった吉田被告は勤務先からメタノールを持ち出す機会が十分にあったなどとして「犯人は被告に限られる」と主張。痕跡をほぼ残さず殺害しており、「計画性が認められる」とした上で、「強い憎しみがあり、動機は身勝手だ」と非難した。
 弁護側は最終弁論で、妻が自ら入手したメタノールを摂取して死亡した可能性は否定できないと指摘。普段飲んでいる焼酎に吉田被告が混入させたとする検察側主張については、確実に殺害するためには多量のメタノールが必要で、「致死量を飲ませるのは現実的ではない」と訴えた。
 最終意見陳述で吉田被告は、妻の死亡について「二日酔いだと思い込んで救急車をすぐに呼ばなかったのが原因。殺意を抱いたことも、メタノールを摂取させたこともない」と述べた。
 起訴状によると、吉田被告は22年1月14~15日ごろ、大田区の自宅で、殺意を持って妻容子さん=当時(40)=にメタノールを摂取させ、急性中毒で死亡させたとされる。 (C)時事通信社