東京都大田区で2022年、メタノールを使って妻を中毒死させたとして、殺人罪に問われた製薬大手「第一三共」元社員、吉田佳右被告(42)の裁判員裁判の初公判が2日、東京地裁(坂田威一郎裁判長)であった。吉田被告は「全て間違っています」と述べ、無罪を主張した。
 公判は10月11日の結審まで計14回開かれ、判決は同30日の見通し。
 吉田被告は罪状認否で「妻に殺意を抱いたことも、メタノールを摂取させたこともない」と訴え、弁護人は「妻が亡くなったのは自分で摂取したからだ」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、吉田被告は当時、第一三共の副主任研究員として実験でメタノールを扱うことがあったと説明。妻の死亡前に自身の研究室に2リットル分を持ち込んでいたほか、妻が普段飲んでいた焼酎パックにメタノール由来の白濁痕があり、「被告が摂取させたことは明らかだ」とした。
 互いの性格に不満を抱くなど夫婦関係は悪化しており、被告には殺害する動機があったとも指摘。第三者の関与は考えにくい上、幼い一人息子の存在や妻に自殺をうかがわせる言動や動機がなかったことから自殺を否定した。
 弁護側は、妻が死亡前に自室で嘔吐(おうと)していたが、被告は二日酔いだと思ったと主張。焼酎パックの痕跡もメタノールが原因とは特定できないとした。
 起訴状などによると、吉田被告は22年1月14~15日ごろ、大田区の自宅で、殺意を持って妻容子さん=当時(40)=にメタノールを摂取させ、急性中毒で死亡させたとされる。 (C)時事通信社