近年のコホート研究でアトピー性皮膚炎認知症の関連性が示唆されているものの、一貫した知見は得られていない。韓国・Pusan National UniversityのYeon-Su Gwak氏らは、システマチックレビューとメタ解析、さらにメンデルランダム化(MR)解析によりアトピー性皮膚炎認知症の関連を分析。アトピー性皮膚炎認知症、特にアルツハイマー型認知症の発症と有意に関連することが明らかになったとActa Derm Venereol2025; 105: adv41321)に報告した(関連記事「アトピー性皮膚炎、セルフ認知行動療法が有効」「高齢者の抗菌薬使用、認知症と関連せず」)。 

認知症は15%、アルツハイマー型認知症は18%のリスク上昇

 アトピー性皮膚炎はQOLに悪影響を及ぼすことが知られているが、最近の研究では認知症のリスクを高める可能性も指摘されており、その背景には免疫系の異常や調節不全が関与していると考えられている(Ann Allergy Asthma Immunol 2021;127: 200-205J Am Acad Dermatol 2022; 87: 314-322Ann Neurol 2023; 93: 384-397)。

 しかし、既報のコホート研究結果を包括的に統合したシステマチックレビューとメタ解析は行われていない。また、遺伝情報を用いたMR解析による、アトピー性皮膚炎認知症の因果関係を評価した研究も不足している。そこでGwak氏らは、これらを組み合わせた包括的なアプローチにより両者の関連を分析した。

 同氏らはシステマチックレビューに当たり、MEDLINE、EMBASE、Scopus、ScienceDirect、Web of Scienceなどの主要なデータベースを用い、関連するコホート研究を検索。最終的に1,257万6,235人を含む5件の縦断的コホート研究がメタ解析の対象となった。

 解析の結果、アトピー性皮膚炎患者の認知症発症のハザード比(HR)は1.15(95%CI 1.07〜1.23)であった。認知症のタイプ別に検討したところ、アルツハイマー型認知症発症のHRは1.18(95%CI 1.08〜1.27)であった。また、中等度〜重度のアトピー性皮膚炎患者では、全認知症発症のHRが1.37(95%CI 1.21〜1.55)に上ることが示された。

MR解析では因果関係を確認できず

 Gwak氏らは、アトピー性皮膚炎認知症発症に直接関与しているかどうかを評価するためにMR解析も実施した。解析には欧州で行われた大規模なメタ解析が含まれており、サンプル数は86万4,982人(症例群6万653人、対照群80万4,329人)に及んだ。これらのゲノムデータを用い、アトピー性皮膚炎認知症アルツハイマー型認知症、血管性認知症)の因果関係を検討した。しかし、MR解析の結果、アトピー性皮膚炎認知症との間に有意な因果関係は認められなかった

 以上から、同氏らは「アトピー性皮膚炎患者は、特にアルツハイマー型認知症の発症リスクが高い可能性が示された。一方で、MR解析では両者の間に直接的な因果関係は確認されなかった。このことから、年齢、生活習慣、薬剤の影響など、さらなる研究の必要性が示唆される」と結論している。また「本研究で得られた知見は、アトピー性皮膚炎患者における認知症の早期発見や予防を促進し、将来的な医療戦略の策定に貢献する可能性があり、最終的には患者や家族にとっての利益につながることが期待される」と強調している。

(編集部・長谷部弥生)