統合失調症は、認知的機能障害や社会的機能障害を特徴とする慢性精神疾患である。アルゼンチン・Instituto Universitario Hospital Italiano de Buenos AiresのPablo Rosón-Rodríguez氏らは、統合失調症患者が退院して地域医療に移行する際に行われる介入や支援の有効性について、ランダム化比較試験(RCT)12件・1,748例を対象に検証したレビューの結果をCochrane Database Syst Rev2024; 8: CD009788)に報告した。(関連記事「日本の統合失調症の最新有病率が明らかに」)

退院前のケアプラン策定、ケアとフォローアップの調整、退院後の支援の効果を検証

 統合失調症のような重篤な精神疾患の入院例に対する退院移行期の介入は、退院後の患者ニーズの予測、地域におけるケアの継続性の担保に有用であり、全般的状態や機能レベルの改善、ケアの満足度向上につながると考えられる。

 Rosón-Rodríguez氏らは、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、PubMedなどの医学データベースに2022年12月7日までに収載された研究を検索。統合失調症患者および統合失調症関連障害患者における退院移行期介入退院前のケアプラン策定ケアとフォローアップの調整退院後の支援の効果を通常ケアと比較したRCT 12件・1,748例を抽出し、レビューを行った。

 評価項目は、全般的状態(再発)、サービス利用(入院)、全般的機能、ケアに対する満足度、副作用/有害事象、QOL、直接費用とした。二値評価項目(binary outcomes)については、リスク比(RR)と95%CIを算出し、連続型評価項目については、平均差(MD)または標準化平均差(SMD)と95%CIを算出。エビデンスの確実性はGRADEを用いて評価した。

退院後に機能レベルと満足度が改善も、エビデンスレベルは低い

 検討の結果、通常ケアと退院移行期介入で短期的および長期的なサービス利用(入院)リスクにほとんど差がなく(RR 1.18、95%CI 0.55~2.50、I2=54%、4件・462例、エビデンスの確実性:非常に低い)、QOLにも差がない可能性が示された(SMD 0.24、95%CI -0.30~0.78、I2=90%、4件・748例、エビデンスの確実性:非常に低い)。

 一方、退院移行期介入は退院後の機能レベル(全般的機能における臨床的に重要な変化)を向上させる可能性があり(SMD 0.95、95%CI -0.06~1.97、I2=95%、4件・437例、エビデンスの信頼性:非常に低い)、介入に満足している患者の割合(満足度における臨床的に重要な変化)を増加させることも示唆されたが(RR 1.96、95%CI 1.37~2.80、1件・76例、エビデンスの信頼性:非常に低い)、いずれもエビデンスの確実性は低かった。直接費用に関しては1件・124例しか報告がなく、十分な検証は行えなかった。

 以上を踏まえ、Rosón-Rodríguez氏らは「現時点で、統合失調症患者に対する退院移行期介入について明確なエビデンスは得られなかった。退院移行期介入は患者の満足度と機能性を改善する可能性があるが、エビデンスの確実性は極めて低かった」と結論。「対象となったRCTはバイアスリスクと異質性が高く、評価項目の測定方法やデータの欠落といった問題点が見られたため、今後の研究では効果測定に有効なツールの使用を含め、報告の質を向上させる必要がある」と付言している。

編集部・関根雄人