代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)/代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対するビタミンE投与の有効性をめぐっては、一貫した見解が得られていない。マレーシア・University of MalayaのNicholas Ming-Zher Chee氏らは、成人MASLD患者へのビタミンE投与の有効性を検討したプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を対象にシステマチックレビューとメタ解析を実施。その結果、「ビタミンE投与はMASLD患者のAST、ALT、肝臓の組織学的所見を有意に改善した」とJ Gastroenterol Hepatol(2024年8月16日オンライン版)に報告した(関連記事:「ペマフィブラート、肝脂肪/線維化に影響は」「ビタミンC/Eなどで2型糖尿病リスク低下」)。
RCT 8件・1,008例を解析
現在、MASLD/MASHを適応症とする薬剤はなく、米食品医薬品局(FDA)はMASH治療薬の承認条件として、MASHの増悪を伴わない肝線維化ステージの1段階以上改善または肝線維化の進行を伴わないMASH消失を挙げている。
そこでMing-Zher Chee氏らは、MEDLINEなどに収載された18歳以上のMASLDまたはMASH例を対象にビタミンE投与の有効性を検討したプラセボ対照RCTを探索。2,195件の報告からRCT 8件(1,008例中ビタミンE群255例、プラセボ群253例、MASLD例対象のRCT 6件、MASH例対象のRCT 2件)を抽出してシステマチックレビューを実施、そのうち症例数が十分な7件でメタ解析を行った。なお、妊娠例またはMASLD/MASH以外の肝疾患が併存する例を含む報告、完全静脈栄養法や減量手術を併用した報告などは除外した。
主な評価項目は、プラセボ群と比較したALTおよびASTの標準化平均差(SMD)およびベースラインと比較した肝臓の組織学的改善(MASHを含む)とした。
MASH例ではALTの改善得られず
追跡期間の範囲は8~96週、ビタミンE投与量の範囲は400~800IU/日だった。
解析の結果、ALTはビタミンE投与群で有意に低下した(SMD -0.82、95%CI -1.13~-0.51)。ただし、病態で層別化したサブグループ解析では、MASLD例において有意な改善が認められたものの(同-0.88、-1.21~-0.55)、MASH例では有意差は示されなかった(同-0.70、-1.47~0.07)。
ASTもビタミンE投与群で有意に低下し(SMD -0.68、95%CI -0.94~-0.41)、いずれの病態においても有意差を示した(MASLD例:同-0.83、-1.15~-0.51、MASH例:同-0.42、-0.76~-0.08)。
また、投与期間で24週以上、24週未満に層別化して検討したところ、いずれにおいてもALT、ASTの有意な改善が認められた。
MASH消失率高いが肝線維化には有意差なし
肝臓の組織学的所見に関するデータはRCT 2件から得られた。肝臓脂肪、小葉内炎症、肝細胞の空胞変性はビタミンE投与群で有意に改善した〔順に平均差-0.60、95%CI -0.83~-0.37、同-0.34、-0.53~-0.16、同-0.32、-0.53~-0.12〕。一方、肝線維化の有意な改善は認められなかった(同-0.23、95%CI -0.51~0.05)。
プラセボ群と比べ、ビタミンE投与群のMASH消失率はリスク比で1.9(95%CI 1.20~3.02)と著明に高かった。
Ming-Zher Chee氏らは研究の限界として、①RCT間の異質性が高い、②組織学的改善に関するデータが得られたのは2件のみ-などを挙げた。
その上で、同氏らは「MASLD例へのビタミンE投与は、ALT、ASTを有意に改善し、MASH消失に有効性を示した」と結論。「ビタミンEの種類、投与量および長期予後に関するさらなる研究が待たれる」と展望している。
(編集部・小田周平)
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