「細胞カプセル化試薬(AGM)」を開発、2024年4月販売開始
東陽テクニカ
CO2インキュベータの2D環境下で、動物細胞の3D培養を容易に
株式会社東陽テクニカ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:高野 俊也(こうの としや)、以下 東陽テクニカ)は、自社開発した「細胞カプセル化試薬(AGM※1)」を2024年4月1日に発売いたしました。 本製品は、国立研究開発法人理化学研究所(以下 理研)の特許技術(特許第7018685号)を基に、東陽テクニカが動物細胞の三次元(3D)培養向けに開発しました。通常の二次元(2D)培養装置(CO2インキュベータ)のディッシュ内において、3D培養を実現します。本製品で、カプセル作製から細胞封入まで実施可能です。 東陽テクニカは、「細胞カプセル化試薬(AGM)」の提供を通して、最先端の医学研究で必須とされる3D培養を効率的に実現することで、バイオサイエンス分野における研究開発の発展に寄与してまいります。 ※1 AGM:Agarose Gel Microcapsule(アガロースゲル・マイクロカプセル)
背景/概要
人類・霊長類をはじめとした動物や植物の細胞は生物学的根幹で、細胞を用いた培養技術は、生物学・医学研究などはもちろんのこと、老化研究・ワクチンや治療用たんぱく質研究・がん研究、再生医療、創薬、幹細胞の研究など、最先端医療の分野で基本技術とされています。
細胞の培養技術には、三次元(3D)培養と二次元(2D)培養の2種類があります。これまで多く使われてきた2D細胞培養は、いわゆる単層の培養環境で実施されるため、栄養や酸素を均一に細胞に届けることができる一方、2D環境における細胞特性の変化に課題がありました。実際の生体内は、3D環境下でさまざまな種類の細胞が複雑に組み合わされて構成されており、細胞増殖も平面構造でなく立体構造(3D増殖)で、薬物反応、生化学的・生理学的な変化も2Dでの培養細胞とは異なるといわれています。そのため、生体内を想定した研究分野においては2Dではなく3D細胞培養が適しており、生体内組織を模倣できる3D細胞培養の技術は最先端の医学研究で重視されています。しかし、3D培養は2D培養に比べて準備の難しさや費用の高さが課題でした。
東陽テクニカは、2022年9月にアガロースゲル・マイクロカプセルの作製技術について理研と特許使用許諾契約を締結しており、2023年1月から自社開発の微生物用AGM試薬キットを販売しています。今回、理研の作製技術を基に新たに東陽テクニカ独自で生細胞のカプセル化技術を開発し、「細胞カプセル化試薬(AGM)」を発売しました。本製品は、生細胞を生体適合性のある保護カプセルに封入することで最適な生存環境を維持でき、水溶系の中で3D構造の維持が可能です。CO2インキュベータでの2D培養環境下で3D培養が可能になり、低コストで3D培養を実現できます。また、細胞移植、細胞ベースの治療的送達、制御された薬物送達など、多くの研究領域にて使用できます。なお、このカプセル化に伴う膜形成により、自己免疫系からの攻撃に対する抑制・防御機構としても機能すると考えられており、異種間移植などへの応用も考えられます。
上の図は、実際にヒト乳がん細胞由来のMCF-7をAGMのカプセル内で培養してスフェロイド(※2)化した様子で、12日間で順調に培養ができています。このカプセルには多孔性のアガロースゲルのシェルで数十~数百nm(ナノメートル)の細孔が開いており、封入後もガスや培地成分の交換が容易に行えます。
主な特長
■ディッシュ培養(2D細胞培養)環境下で課題となってきた細胞変性を抑制
■生体内を模倣した3D環境を維持できる
■多孔性膜から成るカプセルなので培地交換・ガス交換を迅速に行える
■スフェロイド、オルガノイド(※3)の形成やスフェロイドの生存率の向上
■バイオリアクター内での攪拌(かくはん)で起こるせん断力からの保護機構
■複数細胞の共培養(※4)カプセルとして利用可能
<用途>※一部検証中
■カプセルの多孔性を活用した細胞外小胞体などの分離・採取
■スフェロイド、オルガノイドなどカプセル細胞を活用した研究
■Organ on Chip(生体機能チップ)の応用研究
■細胞培養の保護カプセル(せん断力からの保護など)
■カプセルの膜構造により免疫細胞からの攻撃の排除
■腸内フローラ改善物質用搬送への応用
■多孔性膜のカプセル壁面を使った迅速な薬液交換による薬効評価
※2 スフェロイド:単一細胞同士が集合・凝集した細胞塊で球状(立体構造)形成されたもの。生体内に近い細胞本来の特性・機能を示すとされる。
※3 オルガノイド:幹細胞や生体由来の微細な組織片を用い、自己複製能(分化能)を利用し、3D培養により臓器の一部を再現した三次元構造体の総称で臓器・組織を模倣できるミニ臓器とも呼ばれている。疾患研究で有用な前臨床モデルとして確立されつつある。
※4 共培養:複数種類の細胞を同一環境で培養すること。
【製品データ】
製品名:細胞カプセル化試薬(AGM)
型番:AGM-1000
販売価格:23万8,000円(税抜)
製品ページ:https://www.toyo.co.jp/agm/
<参考資料>
・東陽テクニカ ニュースリリース (2022年12月20日)
微生物 1 細胞ゲノム解析用「AGM(アガロースゲル・マイクロカプセル)試薬キット」を2023年1月に発売
100μm のカプセルを作製、増幅時のゲノムカバー率を向上
https://www.toyo.co.jp/files/user/company/documents/release/221220_agm_71017.pdf
<株式会社東陽テクニカについて>
東陽テクニカは、1953年の設立以来、最先端の“はかる”技術のリーディングカンパニーとして、技術革新に貢献してまいりました。その事業分野は、情報通信、自動車、エネルギー、EMC(電磁環境両立性)、海洋、ソフトウェア開発、ライフサイエンス、セキュリティなど多岐にわたります。5G通信の普及、クリーンエネルギーや自動運転車の開発などトレンド分野への最新の技術提供に加え、独自の計測技術を生かした自社製品開発にも注力し、国内外で事業を拡大しています。最新ソリューションの提供を通して、安全で環境にやさしい社会づくりと産業界の発展に貢献してまいります。
株式会社東陽テクニカ Webサイト:https://www.toyo.co.jp/
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CO2インキュベータの2D環境下で、動物細胞の3D培養を容易に
株式会社東陽テクニカ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:高野 俊也(こうの としや)、以下 東陽テクニカ)は、自社開発した「細胞カプセル化試薬(AGM※1)」を2024年4月1日に発売いたしました。 本製品は、国立研究開発法人理化学研究所(以下 理研)の特許技術(特許第7018685号)を基に、東陽テクニカが動物細胞の三次元(3D)培養向けに開発しました。通常の二次元(2D)培養装置(CO2インキュベータ)のディッシュ内において、3D培養を実現します。本製品で、カプセル作製から細胞封入まで実施可能です。 東陽テクニカは、「細胞カプセル化試薬(AGM)」の提供を通して、最先端の医学研究で必須とされる3D培養を効率的に実現することで、バイオサイエンス分野における研究開発の発展に寄与してまいります。 ※1 AGM:Agarose Gel Microcapsule(アガロースゲル・マイクロカプセル)
背景/概要
人類・霊長類をはじめとした動物や植物の細胞は生物学的根幹で、細胞を用いた培養技術は、生物学・医学研究などはもちろんのこと、老化研究・ワクチンや治療用たんぱく質研究・がん研究、再生医療、創薬、幹細胞の研究など、最先端医療の分野で基本技術とされています。
細胞の培養技術には、三次元(3D)培養と二次元(2D)培養の2種類があります。これまで多く使われてきた2D細胞培養は、いわゆる単層の培養環境で実施されるため、栄養や酸素を均一に細胞に届けることができる一方、2D環境における細胞特性の変化に課題がありました。実際の生体内は、3D環境下でさまざまな種類の細胞が複雑に組み合わされて構成されており、細胞増殖も平面構造でなく立体構造(3D増殖)で、薬物反応、生化学的・生理学的な変化も2Dでの培養細胞とは異なるといわれています。そのため、生体内を想定した研究分野においては2Dではなく3D細胞培養が適しており、生体内組織を模倣できる3D細胞培養の技術は最先端の医学研究で重視されています。しかし、3D培養は2D培養に比べて準備の難しさや費用の高さが課題でした。
東陽テクニカは、2022年9月にアガロースゲル・マイクロカプセルの作製技術について理研と特許使用許諾契約を締結しており、2023年1月から自社開発の微生物用AGM試薬キットを販売しています。今回、理研の作製技術を基に新たに東陽テクニカ独自で生細胞のカプセル化技術を開発し、「細胞カプセル化試薬(AGM)」を発売しました。本製品は、生細胞を生体適合性のある保護カプセルに封入することで最適な生存環境を維持でき、水溶系の中で3D構造の維持が可能です。CO2インキュベータでの2D培養環境下で3D培養が可能になり、低コストで3D培養を実現できます。また、細胞移植、細胞ベースの治療的送達、制御された薬物送達など、多くの研究領域にて使用できます。なお、このカプセル化に伴う膜形成により、自己免疫系からの攻撃に対する抑制・防御機構としても機能すると考えられており、異種間移植などへの応用も考えられます。
上の図は、実際にヒト乳がん細胞由来のMCF-7をAGMのカプセル内で培養してスフェロイド(※2)化した様子で、12日間で順調に培養ができています。このカプセルには多孔性のアガロースゲルのシェルで数十~数百nm(ナノメートル)の細孔が開いており、封入後もガスや培地成分の交換が容易に行えます。
主な特長
■ディッシュ培養(2D細胞培養)環境下で課題となってきた細胞変性を抑制
■生体内を模倣した3D環境を維持できる
■多孔性膜から成るカプセルなので培地交換・ガス交換を迅速に行える
■スフェロイド、オルガノイド(※3)の形成やスフェロイドの生存率の向上
■バイオリアクター内での攪拌(かくはん)で起こるせん断力からの保護機構
■複数細胞の共培養(※4)カプセルとして利用可能
<用途>※一部検証中
■カプセルの多孔性を活用した細胞外小胞体などの分離・採取
■スフェロイド、オルガノイドなどカプセル細胞を活用した研究
■Organ on Chip(生体機能チップ)の応用研究
■細胞培養の保護カプセル(せん断力からの保護など)
■カプセルの膜構造により免疫細胞からの攻撃の排除
■腸内フローラ改善物質用搬送への応用
■多孔性膜のカプセル壁面を使った迅速な薬液交換による薬効評価
※2 スフェロイド:単一細胞同士が集合・凝集した細胞塊で球状(立体構造)形成されたもの。生体内に近い細胞本来の特性・機能を示すとされる。
※3 オルガノイド:幹細胞や生体由来の微細な組織片を用い、自己複製能(分化能)を利用し、3D培養により臓器の一部を再現した三次元構造体の総称で臓器・組織を模倣できるミニ臓器とも呼ばれている。疾患研究で有用な前臨床モデルとして確立されつつある。
※4 共培養:複数種類の細胞を同一環境で培養すること。
【製品データ】
製品名:細胞カプセル化試薬(AGM)
型番:AGM-1000
販売価格:23万8,000円(税抜)
製品ページ:https://www.toyo.co.jp/agm/
<参考資料>
・東陽テクニカ ニュースリリース (2022年12月20日)
微生物 1 細胞ゲノム解析用「AGM(アガロースゲル・マイクロカプセル)試薬キット」を2023年1月に発売
100μm のカプセルを作製、増幅時のゲノムカバー率を向上
https://www.toyo.co.jp/files/user/company/documents/release/221220_agm_71017.pdf
<株式会社東陽テクニカについて>
東陽テクニカは、1953年の設立以来、最先端の“はかる”技術のリーディングカンパニーとして、技術革新に貢献してまいりました。その事業分野は、情報通信、自動車、エネルギー、EMC(電磁環境両立性)、海洋、ソフトウェア開発、ライフサイエンス、セキュリティなど多岐にわたります。5G通信の普及、クリーンエネルギーや自動運転車の開発などトレンド分野への最新の技術提供に加え、独自の計測技術を生かした自社製品開発にも注力し、国内外で事業を拡大しています。最新ソリューションの提供を通して、安全で環境にやさしい社会づくりと産業界の発展に貢献してまいります。
株式会社東陽テクニカ Webサイト:https://www.toyo.co.jp/
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(2024/04/11 10:30)
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