医学生のフィールド

外部と交流深め、社会を学ぶ場つくる
~医師のキャリアパスを考える医学生の会~

 学生時代に勉強だけでなく、自分の将来やこれから直面する社会問題について考えることは、とても重要だ。

 「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、そうした観点から、視野の広い一流の医療人となるための学びの機会をつくることを目的に設立され、今年で12年目を迎えた。

 代表の浜松医科大学5年生の徳山喜心さんに話を聞いた。(聞き手・文 医療ライター・稲垣麻里子)

 ◇臨床研修医制度への意見発信、原点に

代表の徳山喜心さん
 ―発足の経緯を教えてください。
 徳山さん 臨床研修医制度見直しの流れの中で、2008年に当時の東京大学医学部の学生が中心になって、この制度に対する学生の意見を集める場所として立ち上げたのが始まりです。

 その後、昨今問題となっている医師不足や女性医師への差別といった問題に関して、医学生がどう考えているのかを発信し、改善につなげていくための団体として、さままな署名運動をするなど、活動を続けてきました。

 実際に臨床研修医制度見直しの際には、われわれの活動により定員削減に大幅なストップがかかったと聞いています。

 現在、署名運動は行っていませんが、将来、自分に降りかかってくるであろうさまざまな問題を、医学生が自分自身のこととして捉えて、キャリアパスを考えるための場を提供しています。

 ◇医学部という環境の特殊さに疑問がある

 ―キャリアパスを考える場というのは?

 徳山さん 実は僕自身、医学部という環境の特殊さに少し疑問を感じています。主に問題点は三つあると思っています。

 一つ目は、医学部の学生は自分のキャリアを考える機会が少ないことです。理由は入学した時点ですでに職業が決まっているからです。他の学部生は就活で自分のキャリア、やりたいことを熟考する機会がありますが、医学生はないんです。

 二つ目は、医学部が閉鎖的な空間で、他のいろんなバックグラウンドを持つ学生や先生とコミュニケーションを取る機会が少ないことです。浜松医大のような単科大学も多く、交流する人の考え方がどうしても偏る傾向にあります。

 三つ目は、医療に関わる問題が今、世間に多いということです。不正入試、無給医や医療訴訟など、ちまたで騒がれている社会的な問題がある中で、将来必ず関わるであろう医療問題を、医学生自身が自分たちのこととして考える機会が多くないという現状があります。

 キャリアパスを考える会は、この三つの問題を解決するために、学生のうちから考える機会をつくることを目標にしています。

 ◇医学と社会の上に成り立つ医療

 徳山さん なぜ「学生のうちから」というのは、医療というのは医学だけでなく、医学と社会の上に成り立っていると思うんです。

 大学の講義で医学は十分学べますが、社会のことはあまり学べません。広い視野を持った医療人になるために、学生の間に社会を学ぶ、その学ぶ機会をつくるために、われわれの団体があるべきだと思っています。

 私は人を幸せにしたいと思っています。人を幸せにするときに、自分の価値観を持っていないと、人を幸せにはできないと考えています。

 自分の価値観を知っていたら、社会の中で自分のやりたいこと、できること、やるべきことを見つけることができる。自分のやるべきことに向かって努力することが一流の医療人につながると思います。


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