治療・予防

重症化すると突然死の危険も
早期発見が鍵―大動脈弁狭窄症

 高齢化を背景に大動脈弁狭窄(きょうさく)症の患者が増えている。加齢に伴い心臓の弁が開きにくくなり、血流が妨げられる病気だ。軽度のうちは自覚症状が乏しいため発見しづらいが、重症化すると突然死の可能性もある。東京医科歯科大学大学院(東京都文京区)医歯学総合研究科心臓血管外科学の荒井裕国教授に話を聞いた。

 ▽乏しい自覚症状

 心臓には血液を正しい方向に流すための弁が四つあり、これらの弁がうまく機能しなくなる病気を「心臓弁膜症」と呼ぶ。このうち心臓から大動脈に血液を流す大動脈弁の開きが悪くなるのが大動脈弁狭窄症だ。わずかな隙間から無理やり血液が押し出されるため、心臓に強い圧力がかかる。放置すると重症化し、不整脈や心不全から死に至る危険もある。

治療により、旅行やスポーツを楽しめるまで回復する人も

 大動脈弁狭窄症のほとんどは、加齢に伴い大動脈弁が石灰化して硬くなることが原因だ。そのため、特に高齢者が気を付けるべき疾患といえる。日本では60歳以上の患者数は軽症例を含めると約284万人に上り、先進37カ国で大動脈弁狭窄症と診断された人の割合は60~74歳で2.8%、75歳以上では13.1%とする報告もある。

 軽度のうちは自覚症状のないことが多いが、進行すると疲れやすくなり、胸痛や息切れ、動悸(どうき)などが出てくる。荒井教授は「症状が表れるようになった段階で、既に重症化している患者が多い」と指摘。早期発見の難しさは、膵臓(すいぞう)がんに匹敵するとの見解もある。

 ▽人工弁への置換が主流

 大動脈弁狭窄症は聴診と超音波検査で診断がつく。軽度の場合、症状に応じて強心薬や利尿薬、血管拡張薬などを使った対症療法が行われる。重症化して弁の機能が低下した患者には、開胸して大動脈弁を人工弁に取り換える手術が主な治療となる。術後は、旅行やスポーツを楽しめるまで回復する患者も少なくない。

 また、以前は手術困難とされていた肺気腫や動脈硬化がある患者や、過去に心臓手術を受けた患者を中心に、開胸手術よりも小さな傷で済み、身体への負担が軽いとされる「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」が広がりつつある。TAVIでは、太ももの付け根などの血管から入れた管状のカテーテルを使って人工弁を心臓に植え込む。

 荒井教授は「大動脈弁狭窄症は、症状がないまま気付かないうちに進行し、突然死に至ることもあります。息切れなどいつもと違う症状があれば、『少し休めば治るから大丈夫』『年齢のせいだから仕方ない』と考えず、かかりつけ医に相談してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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