話題

子どもの吃音
周囲が不安を理解して対応を

 吃音(きつおん)は、2~4歳ごろに発症することが多く、幼児の10~20人に1人の割合で見られる。その7~8割は言葉の発達に伴って自然に消失するが、8歳を過ぎると症状が消失しにくくなり、成人しても吃音の残る例がある。国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)自立支援局の森浩一局長に聞いた。

 ▽意識せず話せる機会増やす

 吃音は〔1〕話す時に「お、お、おはよう」と同じ音を繰り返す〔2〕「おーはよう」と引き伸ばす〔3〕言葉が詰まる―など、滑らかに発話できない状態をいう。発語の際に、言葉を出そうと手を大きく振ったりするなど、体の一部を動かす随伴症状が表れる場合がある。「吃音は幾つかの遺伝子の異常が大きな要因だといわれています。一部ですが、原因遺伝子も特定されています。また、親の育て方が原因になるという俗説は否定されています」と森局長。

 吃音は、独り言や歌など、無意識に発話する場面では出にくくなる。そのため、森局長は「意識せずに楽に話せる環境を整え、そうした機会を増やすことが治療につながります」と説明する。

 ▽専門家に相談を

 逆に、吃音の子どもに否定的な対応をすると、発語に対する不安を招き、自己肯定感が低下する。叱られたり、いじめられたりした経験は発話の際にフラッシュバックし、恐怖や不安を強くする。そして、吃音を隠そうとするようになり、症状が進行する悪循環に陥る。

 また、成長すると、言葉を言い換える工夫をするようになるため、周囲が気付きにくい。未治療のまま悩みを抱えている人が多く、言葉をうまく話せず、伝えたいことが伝えられないストレスから社交不安や抑うつなどの心理的問題を生じる例もある。

 このため、周囲が吃音を正しく理解し、早い時期からサポートを行うことが重要となる。幼児期は周りの人がゆったりと間(ま)を取りながら話したり、兄弟間の競争をなくして順番に話させたりするなどして、落ち着いて話せる環境を整えることが大切だという。

 悩みのある人は、言語聴覚士や小学校の「ことばの教室」などで言葉のリハビリや心理面のサポートを受けたい。専門家に相談するだけで不安が解消されて、吃音が改善するケースもあるようだ。

 森局長は「本人が話す時に苦しがっていたり、話すのを避けている様子が見られたり、小学校入学1年半前ごろまでに症状が軽くならない場合は、言語聴覚士に相談し、発話や心理面でのサポートを受けましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)


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